「上場企業は“株主の利益の最大化”のために、いかに利益を上げられるかが重要になります。そうなると、なかなか新規事業に全振りするのは簡単ではありません。例えば、ひとつの事業を本格的にやるとなると最低でも10〜20億円は必要になりますが、gumiの営業利益は20億〜60億円ほどです。そうした状況を踏まえると、gumiの中で新しく事業を立ち上げるハードルは高いな、と思いました」(國光氏)

一方、ここ数年で未上場のスタートアップが2桁億円の資金調達をするのは当たり前となっており、中には3桁億円の資金調達を実施するスタートアップも出てきている。

そんなスタートアップ・エコシステムの変化もあり、國光氏は「事業運営、資金面でも未上場企業の方が有利な状況になっている。であれば、独立してやった方が開発のスピードも早まるのではないか」と考えるようになったという。

その結果、2020年3月に國光氏はgumiの連結子会社「gumi X Reality」から、よむネコの全株式を譲受、いわゆるMBO(マネジメント・バイアウト)を実施した。その3カ月後、2020年6月に社名を今の“Thirdverse”に変更。そのタイミングで、ソニー・インタラクティブエンタテインメントでPlayStation事業のゲームプロデューサーを務めた経験を持つ伴 哲氏を取締役COOに迎えるなど、新たな経営体制で再スタートを切った。

VR市場は「これから黄金時代に入る」

再スタートから約1年弱。なぜ、このタイミングで國光氏はThirdverseの代表取締役CEOに就任することにしたのか。その背景にあるのが、VR市場の勃興だ。

2016年にVRデバイスが本格的に出そろうと言われ、日本でも「VR元年」といった言葉が飛び交ってはいた。ただ期待通りに普及が進まず、毎年のように「今年こそがVR元年」と言われながら、実際にはVRは一部の好事家のものであり続け、一般化はしていない。そうした中、Oculus Quest 2の登場で風向きは大きく変わる。

「初代のOculus Questは発売から2年で累計120万台しか売れていないのですが、Oculus Quest 2は発売から約半年で約4倍も売れている。また、初代が抱えていた弱点の大半を克服するなど、Oculus Quest 2はVRデバイスの圧倒的なゲームチェンジャーとなっています。年内には累計販売台数が1000万台を突破するのではないでしょうか」(新氏)