また、日銀は同時に、マイナス金利政策を解除し、ゼロ金利政策へ移行すると予想する。インフレの過熱リスクにも柔軟に対応するためだ。もっとも、当面は実質金利がマイナス圏のまま、緩和的な金融環境が継続するとみている。

 金利の上昇は利息収入・負担の変化を通じて、各経済主体に異なる影響をもたらす。統計データなどから試算すると、家計と金融機関の純利息収入(利息収入と利息負担の差)は増加する一方、企業、政府、日銀では減少する。特に企業では、借入額が相対的に大きく、借入期間は数年程度の短期に集中していることから、短期金利が上昇した場合の影響は大きい。

 家計全体では、負債を大幅に上回る預金を保有するため、金利上昇は純利息収入を増加させる。だが、これは主に高齢者世帯の話で、30~40代の世帯は打撃を受ける。子育て世代と重なることから住宅などを購入する世帯が比較的多く、預貯金を上回る負債を抱えているからだ。金利上昇は、住宅ローンなどの利払い負担の増加を通じて生活を圧迫することになろう。

 インフレが持続すれば、過去に類を見ない金融緩和策は出口に向かう。インフレが目標を上回れば、利上げのペースが早まるリスクもある。金利の正常化が進む過程で日本経済や各経済主体が受ける影響には注意が必要だ。

(大和総研 シニアエコノミスト 久後翔太郎)