円安の進行が止まらない。賃金は実質ベースでは増えておらず、円安による国内の物価押し上げという負の影響は深刻だ。為替レートには政策金利が大きく影響するが、日銀は早ければ12月にもマイナス金利政策の解除を検討する可能性がある。一方、日本経済の実力を高めるテーマとして、半導体分野で大型投資プロジェクトが進行している。これがうまくいけばわが国経済にも光明が差し込み、円の実力=購買力も高まって円安に歯止めをかけられるだろう。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
円安が151円まで進行
早ければ12月にもマイナス金利政策解除か
10月31日のニューヨーク時間、円は米ドルに対して一時151円70銭程度まで下落(ドル高・円安が進行)した。その後、円は小幅に買い戻された。11月3日、米国の雇用統計の発表で、米国の景気減速が徐々に現実味を帯びたとの見方が増えたこともあり、米金利は低下し円安の一服感も出たようだ。
ただ、今後すぐに円がドルに対して大幅に上昇することは考えづらい。わが国と米国の経済の実力(潜在成長率)の差は大きい。基調として、円は弱含みの展開が続くことになるだろう。円安が定着し原油、天然ガス、食料などの価格が上昇すると、わが国の輸入物価は上昇しコストプッシュ型の物価上昇は進みやすくなる。
10月の金融政策決定会合にて日本銀行は、2024年の消費者物価指数(除く生鮮食品)の上昇率を、それまでの1.9%から2.8%に引き上げた。近いうちに日銀は慎重に異次元緩和の追加修正を検討し、過度な円売り圧力を抑えようとするだろう。市場関係者の一部は、「早ければ12月にもマイナス金利政策の解除を予想する」との見方もあるようだ。
今後、わが国にとって、経済の実力を高めることが最も重要なテーマとなる。期待できる案件として、半導体の分野で大型投資プロジェクトが進行している。これがうまくいけばわが国経済にも光明が差し込み、円の実力=購買力も高まって円安に歯止めをかけられるだろう。