業界トップに立つ三菱商事はエネルギートランスフォーメーション(EX)へ2030年までに2兆円を投資する計画を掲げ、旗振り役として期待がかかる。また、1兆円超の利益を出した反動をどう抑えて成長路線を歩み続けるかに注目が集まっている。特集『総予測2024』の本稿では、次なるビジョンを中西勝也社長に問う(聞き手/ダイヤモンド編集部 猪股修平)
2024年の“天気予報”
「大気の状態が不安定」になる可能性
――前年の反動がありつつも、商社業界は好調です。2023年を振り返ると?
社長に就任して「攻めと守りを両方やる」という方針を掲げ、会社の基礎体力を強くするために「循環型成長モデル」を打ち立てて取り組んできました。そして23年3月期に1兆円を超える過去最高の純利益が出ました。
23年は資源価格が落ち着いた中でも、足元の事業で結果を出し、高水準の利益を維持できたと評価しています。
――24年は現中期経営計画の最後の年です。進捗や見通しは。
今の好調な流れがもう少し続くと思います。ただ、地政学、為替、金融政策の影響も受けるので、それらに注意を払う必要があります。
脱炭素化社会やロシアの影響もここにきてクローズアップされています。半導体産業の活発化やチャットGPTの普及に代表されるように、便利になればなるほど世の中は電化の傾向が強まります。エネルギーの安定供給と脱炭素化への向き合い方によって日本の未来は大きく変わります。その変化に敏感になって中計の最終年度に当たりたいです。
――24年を天気予報で例えると何でしょう。
晴れが続くと思います。ですが、24年11月には米国大統領選挙がある。気持ちとしてはずっと晴れていてほしいですが、「大気の状態が不安定」になる可能性もあります。
――三菱商事にとっての晴れをもたらす要因は何ですか。
目先の業績ではなく、長期的に強い事業をつくることが大切です。循環型成長モデルを仕上げていけば、結果も付いてきます。さらにその先のためにも、成長戦略という種まきをしていきたいです。
――今後、総合商社の要になるはエネルギートランスフォーメーション(EX)のビジネスの柱は何でしょうか。
次ページでは、中西社長が「EX2兆円投資計画」で柱になる次世代エネルギーについて、さらにEX以外の将来に向けた投資先に言及した。