一方、保険証情報の誤登録におけるひも付けミスの割合は8544件(約0.05%)確認されている。ひも付けミスをしたのは医療保険者(健康保険組合など)だが、その原因は次の流れだ。

 まず医療保険者は、マイナンバー未提出の国民のマイナンバーを探さなければならなかった。そしてその際、マイナンバー探索で安易に住基ネットを使ったことが原因だ。成り済ましや同姓同名のトラブル回避のため、住基ネット情報をうのみにせず、本人に連絡して慎重に確認すべきだった。

 それにしても、初期トラブルでなぜこれほど批判を浴びたのか。その原因は、マイナンバーカードが国民にとってあまりにも複雑で分かりにくいからではないか。

 諸外国と異なり、わが国の番号制度実現はインターネット時代に入ってからだ。対面とオンラインで本人確認ができるマイナンバーカードの交付は、遅れを一気に挽回する画期的な策だった。しかし、このICカードは国民にとってハードルが高過ぎた。

 四つのパスワードが必要で、実印相当の機能を持つと言われれば、高齢者は危険だと尻込みするだろう。国民の信頼を得るには、制度を原点から見直し、よりシンプルで分かりやすい仕組みにすべきだ。

(行政システム顧問 蓼科情報主任研究員 榎並利博)