15万部突破のベストセラー『宝くじで1億円当たった人の末路』(日経BP社)には、「宝くじで1億円当てた人」の人生に待ち受ける「その後」が取材されている。著者である鈴木信行・日経ビジネス副編集長(当時)によれば、《急に「お金」が入ると、人は本性をさらけ出し、その結果、「仲間」を失いやすい》という。
実際に本書では、切ないエピソードが記されている。羽振りがよくなった主人公に家族が色めき、友人・部下はたかり、本人はカフェ経営をするも失敗。宝くじで手に入れたお金はなくなり、家族に愛想を尽かされ離婚し、友人・部下は離れていくという末路が描かれている。《急に転がり込んできた大金は、「仲間」と「才能」、そして最終的には「お金」すら失いかねない危険を秘めている》(鈴木氏)と、本書は警鐘を鳴らしている。
しかし、ある調査によれば、高額当せん後に没落する人は極めて少数派だという結果が出ている。スウェーデンでの当せん者420人を対象とした調査(※3)によれば《分析の結果、当せん者は、他のどこかで他の誰かになるという夢を実現することに慎重であることが分かった》という。消費レベルはやや上がるのだが、当せん者はそのままの人生を送る傾向にあるようだ。
宝くじの当せん者は「夢と距離を置くことで神話のような不幸を積極的に避ける」「ぜいたくするよりも用心深くなる」傾向にあり、陶酔と興奮に浸るのは一時的な経験になっているという。結局のところ、当せん金の大部分は貯蓄・投資へと回ることになる。
何とも夢のない結論になってしまった。
※2 Parker, Philip M. and Nader T. Tavassoli (2000), “Homeostasis and Consumer Behavior across Cultures”
※3 Bengt Larsson (2011), “Becoming a Winner But Staying the Same: Identities and Consumption of Lottery Winners”