生活動線上に店舗が充実する日本
飲食店の“テイクアウト”はまだ可能性を秘めている
PICKSを運営するDIRIGIOは、2016年創業。これまでエウレカの共同創業者である赤坂優氏、西川順氏のほか、KLab Venture Partners、iSGSインベストメントワークス、エンジェル投資家の有安伸宏氏から資金調達をしている。代表取締役CEOの本多祐樹氏は、学生起業家だ。慶應義塾大学在籍時の飲食店アルバイトでの経験が、PICKSを開始したきっかけになっているという。
「当時働いていた飲食店では、大口のテイクアウト予約がたびたび入っており、大きな収益源になっていました。しかし、予約の電話に対して店主が1つ1つメニューを読み上げてメモを取るなど、オペレーションが全く整備されていませんでした。これをウェブで解決したかったんです」(本多氏)
幼少期にカリフォルニアに在住していた本多氏は、日本のテイクアウトにはまだまだ可能性があると感じている。日本は通勤経路などの生活動線上にお店が充実しており、ECやデリバリーサービスが便利になってきたとはいえ、まだまだ配送料が高い店も多いからだ。
「飲食店のテイクアウトが抱える課題は、主に『販促チャネル』『注文チャネル』『待ち時間』の3つだと考えています。なので、テイクアウト可能な飲食店を集めたプラットフォームとして販促のサポートをするだけでは不十分。注文フローの簡略化や待ち時間をなくすことでユーザーの顧客体験を改善し、長期的にお店を利用してもらえるよう支援することが、PICKSの役目です」(本多氏)
コロナ禍でサービスは急成長
流通総額は前月比で700%増に
「メニュー」「LINEテイクアウト」といった競合サービスと比べると、PICKSは個人の飲食店でも利用しやすいのが特徴だ。店舗登録料や専用機器の購入は一切不要なので、初期経費なしで運用を開始できる。
4月末時点での加盟店舗は約2300店だが、このうち約1500店は新型コロナウィルスが流行した今年の3~4月に登録されたという。4月は流通総額が前月比700%を達成しており、テイクアウト需要の大幅な増加が見て取れる。これに伴いPICKSでも急遽サービス体制を増強しているが、現状はニーズに対してまだまだ加盟店舗が少ない状態だという。
「これまではビジネスパーソンが昼休みの10分前にサラダを注文するケースが多かったのですが、最近は1人での晩ごはんから家族のランチまで、明らかに利用ニーズが多様化しています。もちろん飲食店にとって苦しい時期なのは間違いないですが、いまは幅広い食事のシーンに価値を提供できる機会にもなっています」(本多氏)