「義務化されたのでチェックを実施しているだけで、国が言う57項目さえあればとりあえずいいよ、という顧客が多かった。遅刻や欠勤などの勤怠状況とも連動しており、従業員のエンゲージメントや生産性を読み解くこともできるのだが、2015年当時では、リリースするのが早すぎたかもしれない」(結城氏)

 とはいえ「勤怠情報の取り込みには反応は薄かったが、他社の製品と比較してUI/UXがよかったので、使いやすさからサービスを選んでくれる企業も多く、これまでに20万人ぐらいのデータを扱ってきている」と結城氏は言う。昨年あたりからは「健康経営」や「働き方改革」への注目が高まり、また義務化施行から3年分のチェック実施を経て、企業の側からも集団分析やエンゲージメントツールとして使いたいとのニーズも出てきているという。

「せっかくのストレスチェック調査を経営資源へ活用するために、職場の状態の『見える化』を行いたいとの声が増えた。ところが推奨57項目のチェックを解析しても、結果は“ふわっと”したものになる。これはチェック項目がすべて原因を推測するためのものではなく、ストレス量がどのぐらいかという結果を問うもので、相関などを見ることができないからだ。そこで我々はまず、退職した人は何が原因で辞めたのか、可能性の高さとの因子を掛け合わせて分析を行うことにした」(結城氏)

 当然ながら退職リスクが高いグループとして一番に挙がるのは「健康を害しており、ストレスも高く、やりがいも感じていない」クラスタだが、それに続くのは「ストレスは低くても、やりがいを感じていない」クラスタだったそうだ。

「高ストレス者かどうかだけでなく、いきいきと働けているかどうかの度合い、すなわちエンゲージメントが大切だということが分析によってわかった。何が要因かがわからなければ、対策のしようもない。職場の状況を見えるようにするために、専門家と作り込んだサービスがpriskHRの後継となる『ラフールサーベイ』だ」(結城氏)

出勤していても生産性が低下する「プレゼンティズム」への対策

 メンタルヘルス業界では、以前から職場の環境や従業員の状況を判断するのに「アブセンティズム」すなわち遅刻や欠勤など「今職場にいない」ことによる生産性の低下状況を見るものはよくあった。既存のEAPなどは、アブセンティズムへの対策を主な目的にしただったものだ。しかし一度出社できなくなった人が、再度継続的に出社できるまでに復帰することは、実際には想像以上に難しい。