delyの執行役員でマーケティング担当の野村知己氏は次のように語る。
「アプリの伸びは順調でしたが、フォロワー数の伸びが少しずつ鈍化し始めたんです。アプリに主軸を移したとはいえ、クラシルを知ってもらうのにSNSは軽視できない存在。てこ入れしないとまずい状況になりました」
そこで2019年3月からSNSのマーケティングを見直していったところ、フォロワー数が毎月、劇的に伸びていき、国内でトップクラスのフォロワーを持つアカウントへと成長した。
インスタは「保存」、ツイッターは「共有」
伸びの要因について、「それぞれのSNSに合った打ち出し方をしたこと」が挙げられると言う。
「TwitterとInstagramで、発信する内容を大きく変えています。また、Facebookは再生回数もエンゲージメントも落ちているので、現在は注力していません」(野村氏)
Instagramの特徴は、拡散性がない代わりにユーザー1人あたりのエンゲージメントが高いことだ。ユーザーが投稿を保存して後で見返せる「保存機能」があるため、クラシルでは意識的に保存されるものを投稿するようにしている。
「Instagramのフォロワーは、20~40代の家事に追われる女性が多いんです。複数の動画をまとめて投稿することができるので、『時短でできるキャベツを使ったレシピ3選』というように、まとめて投稿しています。そうするとユーザーは、自分なりのレシピ帳を作るイメージでその投稿を保存するようになり、結果として、何度もアカウントに訪れるようになります」(野村氏)
一方、Twitterは、時短でできるものより、手の込んだスイーツや創作料理の受けがいい。ただ、日常的に料理をしている主婦層というわけではないため、拡散しても単発で終わることが多い傾向があるという。
「継続的に使う人は少ないが、拡散力があるのがTwitterの特徴です。そのため、“つい共有したくなる投稿”を意識しています。1回の投稿で3枚ほどの画像をアップし、『あなたは何派ですか?』と投票制にしてみたり、『おいしそうな壁紙シリーズ』として料理画像をアップしてみたり」(野村氏)
クラシル自体の投稿ではなくても、Twitter全体の中でいかに“クラシル”というワードを使ってもらうかを考えているため、レシピを作ってみて「おいしかった」とツイートする人を増やすように、レシピの内容にもこだわっている。
頻度や時間を変えて「反応チェック」
現在クラシルでは、Instagram、Twitter、TikTok、YouTubeなどのメディアごとに1~2人の担当者を配置して投稿するようにしている。レシピ動画を制作するデザイナーなどがいるコンテンツチームが、SNSの担当も兼任する体制だ。