「レシピ動画自体は、SNSと非常に相性がいい領域なので、もともとエンゲージメントは高い。ですが、同じような動画ばかり流していたらさすがに飽きられてしまうので、PDCAを回すようにしています。切り口や文面を少しずつ変えてみて、フォロワーの反応をよくチェックするんです」(野村氏)
例えばInstagram。1日あたりの投稿頻度や投稿時間を変えて、どの方法が一番エンゲージメントが高いかを調査。
また、Twitterはトレンド性が高いので、テレビや他のメディアで紹介されるタイミングに合わせて投稿するなど、タイミングも逃さないように注意している。
SNSに「直接的な効果」は求めない
SNS運用の結果として、「数値的な効果は追わない」と割り切っていることも大きな特徴だ。
そもそも、SNSからどの程度アプリに流入したか、直接的な効果を正確に測ることは難しい。しかし、クラシルがユーザーへの定量調査で『クラシルをどこで知ったか』と質問すると、必ずSNSが上位にくる。つまり、SNSで知った結果、最終的にはアプリの利用に行きついているユーザーが多いということであり、軽視できない大きな効果が出ていることは明らかなのだ。
効果が出るとわかると、できるだけアプリへつなげるための施策を試みるのが一般的だが、クラシルでは「続きはこちら」と一部だけを見せてアプリに遷移させるような方法は取っていない。アプリダウンロードへの直接的な送客は期待しておらず、そこに数値的な目標も置いていないのだ。
「以前は、『一部だけ見せて続きはアプリで』という手法を取ったこともありました。でも、全部載せなくなった途端に、ユーザーからの不満の声が一気に増えたんです。しかもアプリのダウンロード数も横ばいでした」(野村氏)
その失敗を生かし、各SNSでコンテンツを完結させる判断を下した。野村氏は、「SNSの投稿からアプリへ流入すると、数値的な効果はわかりやすい。でも、それによってエンゲージメントが落ちてしまう方が、俯瞰してみるとマイナス。直接的な手法は“縮小最適”になってしまう」と主張する。
トレンドに流されず「コアな価値」を大切にする
SNSは、プラットフォーム自体がどんどんアップデートされていくのと、トレンドによって新しいものも次々と生まれる。付いていくのは大変だが、「新しいものにもどんどんチャレンジしていく姿勢は大切」だと野村氏は言う。
例えば現在、TikTokにも挑戦して17万フォロワーを突破。また、Instagram社が提供する動画配信サービス「IGTV」も配信している。