「考え方には異なる部分も多いですが、2人はジョークを交えながら軽快に話し合っています。サンフランシスコのオフィスはペット連れ込みも可能な開放的な雰囲気。情熱を持ったメンバーが家族のようにフラットな環境で働いていることが、急成長の原動力になっているのだと思います」(蓑輪氏)
また、蓑輪氏がAllbirdsの働き方の特徴として挙げたのが、IT企業のような思想で行動していること。連絡や工程管理に最新のツールを導入するのはもちろんだが、その傾向は製品開発にも現れている。
「大手シューズメーカーは、一度リリースした商品をアップデートすることは多くありませんが、Allbirdsでは日常茶飯事。最新のウェブサービスのようにちょっとしたデザインや細かなつくりをたびたび改めており、その頻度は2年で30回近くにものぼります。小売店から『もしかしてちょっと変わった?』と確認の連絡が寄せられるくらいです」(蓑輪氏)
アマゾンでの模造品販売に「私たちの環境への姿勢を真似すべきだ」
Allbirdsがユーザーの支持を集めるもう1つの理由が、環境に配慮した素材を厳選している点だ。シューレースに再生ポリエステルを、インソールには炭素排出量を抑えるために石油ではなくヒマシ油を使用し、靴ひもはリサイクルしたペットボトルでつくられている。こうした取り組みが評価され、環境や社会に配慮した企業に送られる「B Corp認証」を取得している。
同社のエコへの姿勢を象徴するエピソードがある。Allbirdsが人気を集め出した頃、Amazon.comがウールランナーによく似た製品を販売したのだ。
それに対してズウィリンガー氏は、自身のブログで「あなたたちの製品がAllbirdsに似ているのは嬉しいが、それならば環境に優しい素材への使用も真似すべきだった」と表明。Amazonが石油ベースから脱したスニーカーをつくれば、地球環境により大きな影響を与えることができると表明したのだ。Allbirdsではスニーカーの素材もオープンにしている。
こうした姿勢を支持して、環境保護活動家としても知られるハリウッド俳優のレオナルド・ディカプリオもAllbirdsに出資している。シリコンバレーの若者に同社の製品が好評なのも、きっと機能性だけが理由ではないはずだ。
「ジョーイの口癖は、『ベターワールドをつくろう』です。環境問題は一個人ではなく全人類にとっての課題であり、だからこそものをつくる企業はそれに配慮しなければならないと考えています。近年は日本でもSDGsが流行っていますが、単にバッジを身につけるだけでなくそこに込められたイシューを多くの人が理解することが大事。Allbirdsを履く人々が、少しでも環境のためにアクションしてくれると嬉しいですね」(蓑輪氏)