日本初のストアは、2020年1月10日に原宿にオープンした。代表のズウィリンガー氏は、前日に開催された記者発表会で「日本の人々には大きく注目してもらっている。若者のみにとどまらず、たくさんの人に手にとってもらいたい」とコメントして意気込みを示した。またコンセプトストアで直にシューズに触れてもらうだけでなく、D2C(Direct to Consumer:自社サイトから直接商品を販売をするECのこと)にも注力する。ゆくゆくはECサイトでの販売率を50%程度にまで伸ばしたい考えだ。

シンプルなデザインと高い機能性で、シリコンバレーの著名人らにヒット

 創業者の1人であるブラウン氏は、ニュージーランド代表としてワールドカップに出場したこともある元プロサッカー選手だ。同社の日本法人であるAllbirds合同会社でマーケティングディレクターを務める蓑輪光治氏は、「プロ選手として大手シューズメーカーの手法を実際に体験したことが、彼の原動力になっている」とAllbirds誕生のきっかけを説明する。

「Nikeなどの大手シューズメーカーは、大きなスポーツの大会をショーケースとして活用しています。出場選手にはそれぞれの体型やプレーに最適化したシューズを提供する一方で、その年の流行のカラーやロゴをメディアに露出することで、消費者の購買意欲を喚起しているんです」(蓑輪氏)

 デザインを学んだ経験もあるブラウン氏は、引退後にスニーカー作りに身を投じた。派手なロゴを排したシンプルなデザインで、普段使いに最適な履き心地を備えたシンプルなスニーカーだ。その過程で、故郷であるニュージーランドのメリノウールに目をつけたのだという。

 ウールを活用した試作品には、クラウドファンディングで発表した4日間で10万ドルの支援が集まった。その後、ズウィリンガー氏と出会ってAllbirdsを設立。さまざまな投資家から支援を受け、2018年10月のシリーズCでは5000万ドルの資金調達を発表した。

 製品の発売後には、Google共同創業者のラリー・ペイジなどシリコンバレーのトレンド感度の高い層に評価され、一気にブレイクした。高い機能性とスタイリッシュなデザインは、ビジネスシーンでも使える高機能な靴として、ラフなスタイルを好むスタートアップ界隈に好まれている。

ウェブサービスのように、細かなアップデートを繰り返す

 一方のズウィリンガー氏はバイオテクノロジーを専門とし、ゴールドマン・サックスやデロイトといったコンサルティング企業に勤務していた人物だ。出自も経験も全く異なるブラウン氏とズウィリンガー氏だが、むしろ2人の考え方の違いがAllbirdsに活気を生み出しているという。