徳力  これはソーシャルメディアのアカウント運用においても同じことが言えそうですね。例えば、シャープさん(シャープのTwitterアカウント、@SHARP_JP)は、最初から弱みを見せることで応援されていますよね。

けんすう  はい。ただ、シャープさんの場合、あまりにアカウント運営が上手すぎて、「中の人」を応援しようという雰囲気になっているかもしれません。「会社を応援する」というより「シャープという大企業の中で、こんな発信しているこのアカウントの中の人がすごい」という感じになっている。

 大企業だと、そのように、会社としての人気があがるのではなくて個人がフィーチャーされてしまうことがあります。大企業を応援するというのは、対象が曖昧になってしまうので、わかりづらいのかもしれません。

 ちなみにキングコングの西野さんも、弱みが見えたときでなければ、サロンの会員数が伸びないと言っていました。「発言や行動が炎上して批判されたとき」や「えんとつ町のプペル美術館の建設のために土地を買ったとき」などは伸びるけれど、「このままいけば成功するだろうな」と思われると、その瞬間から伸び悩む、と。

徳力  応援する必要がなくなった、と感じられてしまうということですね。そうなると映画『カメラを止めるな!』のヒットも分かりやすい事例かもしれません。

けんすう  そうですね。無名の人たちが少ない予算で映画をつくったというストーリーは、応援しやすいですよね。パソコンでもAppleがマイクロソフトに負けている時代があったけど、今はもう完全にAppleが勝っているという雰囲気なので、逆に最近はマイクロソフトの方が応援されている感じがしますよね。

「誰かの応援があれば勝ちそう」な人が一番応援される

徳力  なるほど。そうなると、けんすうさんが言うように、すでに勝っている会社は無理にインターネット的な方法におもねる必要はない、という結論になるのでしょうか。

けんすう  いえ、常に負け続けるという状態にすることも可能です。それは、挑戦し続けるということです。今は弱い立場だけれど、誰かの応援があれば勝ちそうだと思われる人が一番応援されます。

徳力  それは、おもしろいですね。ソフトバンクの孫さんが一番分かりやすい気がします。掛け金を常に上げ続けていますよね。

けんすう  そうですね。ソフトバンクは、まだ世界では負けているけれど、孫さんなら勝つかもしれないと思われています。本当に負けてしまう人は、応援されないですから。