けんすう 一番の違いは、リクルートもKDDIも「お客さまは、お客さま」と考えていることだと思います。メルカリに代表されるようなインターネット企業は、「お客さまは、仲間」という意識に近いのではないでしょうか。僕の中でも、社員とユーザーの区別は、あまりないんですよ。
徳力 なるほど。けんすうさんがこれまで手がけてきたサービスも、ユーザーと一緒につくってきたという感覚なのですね。
けんすう はい。なので、現在のアルのビジネスでも、書いたワイヤーフレームをTwitterやFacebookに投稿してユーザーと話をしながらつくりました。僕にとっては、このやり方がしっくりくるし、上司に話すのもユーザーに話すのも同じ感覚なんですよ。
徳力 ある意味、生活のハウツー情報をユーザーに書いてもらっていたnanapiも同じつくり方ですよね。
けんすう そうですね。例えば「カルピスのつくり方」などのように、一見すると誰でもが知っている情報も、実は知らない人が多いんです。でも、ごくごく基本的な情報のコンテンツをつくるのは、ユーザーにとっては正直つまらない。なので、そこを書いてくれる人には、きちんとお金を払おうという意識でした。
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徳力 nanapiは、目の付け所がすごく良かったんですよね。当時のインターネットメディアはニュース系ばかりで、本当にみんなが欲しているハウツー系の情報は、まだまだ足りていませんでした。その点nanapiは、みんなが求めている情報をみんなの力でつくるメディアでした。
ただし、お金を払って、ユーザーにコンテンツをつくってもらうというスキームだけが他社のニュース系メディアにコピーされてしまって、結果的に質の低いキュレーションサイトが大量に出てしまったことにつながってしまったように思います。
キュレーション問題と同じことが、マーケティングの世界でも起きている
徳力 実はキュレーションサイトの問題と同じようなことが、マーケティングの世界でも起きていると思います。例えば、コミュニティを活用したマーケティングの成功事例としては、ネスカフェアンバサダーが挙げられます。
起案者の津田さん(元ネスレ日本 津田匡保氏)が東日本大震災を支援しにいった際、被災地の仮設住宅へバリスタを持って行ったところ、引きこもりがちだった人々が無料のおいしいコーヒーを求めて集まるようになって、コミュニティが再結成されたという経験がもとになっていると聞いています。そして、コーヒーの素晴らしさをみんなと一緒に伝えたいから手伝ってほしいと、アンバサダーを募集する「ネスカフェアンバサダー」を始めました。