現在は、また別の形かもしれませんが、Googleは定性的な部分も定量に置き換えて、将来的には機械を使って採用活動することを見据えているのでしょう。僕は、そこにあまり魅力を感じないのです。

北朝鮮ですら変わっている、大企業も「弱み」を見せては?

徳力  おそらく若い世代がネットに対して持っている感覚は、けんすうさんに近いのだと思います。お金や効率性も大事だけど、どちらかと言えば、つながることや自己承認欲求を満たされることの方が喜びになる。それをカルチャーの違う大企業の人にも理解してもらうには、どうしたらいいのでしょうか。

けんすう  企業が行う施策は、基本的に一貫性が大事で、いわば「線」でつながっていることが大事です。なので、いきなり「ユーザーを巻き込んだ施策をしましょう」といったような、「点」の施策を真似してもいびつになるだけです。リクルートもKDDIも自分たちとお客さんを切り分けて考える方法で成功しているので、無理に変える必要はないと思います。

徳力  でも今後、大企業が若い世代をターゲットにしたときに苦しむのではないかと思うのですが。大企業は、どういうやり方ならインターネット企業的なコミュニティを重視するやり方をできると思われますか。

起業家けんすうが語る、20代に支持される大企業の「弱みの見せ方」とはけんすう氏 画像提供:Agenda note

けんすう  本気で遺伝子ごと変えるのであれば、できると思います。実は最近、北朝鮮の政府が行う国民向けの施策が成果を上げていると思います。これまで北朝鮮の指導者は、メディアを使って、自分が完全無欠で偉大であることを示してきましたが、今の金正恩は苦労している様子など、一緒に汗をかいている姿を見せているらしいんです。

 大企業も同じで、マスメディアのみが情報源だった時代は、思いどおりにイメージを確立することができましたが、インターネットの時代には人々のうわさ話がとても力を持ってしまう。それならば、最初から弱みを見せて、応援してもらう形にしようとしていた方がいいかもしれません。

徳力  北朝鮮ですら、変わっているのは驚きです。実際、大企業の中でも、けんすうさんがおっしゃるように、開発者として苦労している、または新規事業担当者として悩んでいる姿を見せることで、ユーザーをうまく巻き込んでいるパターンは結構あると思います。

けんすう  多分、この話にはポイントが2つあって、ひとつは苦労を外に見せて応援してもらうことが大事だということ。もうひとつは、そのリアルタイム性も大事だということだと思います。大企業の場合、発信する情報の確認に時間がかかるので、ユーザーがついてこないというデメリットもあるのかもしれません。