徳力 そこが、すごく面白いですよね。先日、マーケティングカンファレンスの「マーケティングアジェンダ」で元P&Gのジム・ステンゲルさんがブランドパーパスの大事さを講演していました。
ブランドパーパスは、ブランドの存在意義。まさに米良さんが言うように、ブランドとして目指している姿を発信していくことが重要なんですよね。
米良 そうです。まさに大事なのは、パーパスです。企業は、パーパスがあるからチャレンジしているわけです。その結果、参加した人がその企業に愛着を持つようになります。
徳力 どんな製品でも理想を目指して常に変化していくものなのだから、むしろ100%完璧な状態ではないのが当たり前ですよね。それなのに、企業はこれまで「現在の製品が完璧だから、いまこの瞬間に買ってください」と言っていた印象があります。
病気をきっかけに「支援」することの意味を考えた
米良 少し違う話になるかもしれないのですが、現代は「家族」や「会社」といったこれまで絶対的な存在だったコミュニティがなくなっているように思います。特に終身雇用がなくなって突然、あなたのコミュニティは、あなたが決めるもの、という状況になっています。
そのなかで、私たちの世代は「自分が貢献できるところは、どこだろう」と探し求めていますし、上の世代も同じように思い始めています。だからこそ、応援を必要としている人に対するコミュニティも成立しやすくなっています。
徳力 面白い視点ですね。Facebookのようなソーシャルメディアの普及が新しいコミュニティをつくっているのと並行して、日本の場合は、終身雇用の崩壊も作用して、人が新しいコミュニティを求めるようになっている面もあるわけですね。
米良 それは、あると思います。終身雇用の崩壊は、ひとつの事象に過ぎないのですが、インパクトは大きいと思います。これまでは、会社に一度入社すれば、65歳まで面倒をみると言われていたのに、急に自分でキャリアを拓いてください、となったわけですから。
誰もが悩んでいる時代にパーパスを持った人が現れると、自分が協力したら、その人だけでなく自分の道も見えるかもしれないと思う、そんな社会ではないかと思います。
徳力 昔から、そう考えていたのですか。
米良 いえ、私が2年前、30歳のときに癌になって半年ほど会社を休んだときに考えたことです。
徳力 思いがけず時間ができてしまったことで、そういうことをじっくり考えられる時間ができたということでしょうか。