「また、サブスク化によって、飲食店が本来強みとして持っていた『コミュニケーション』に注力できるようになったことが成長の1つの要因だと思っています。飲食店がサブスクを導入することで、お店にとっては会計作業が、ユーザーにとっては財布を出す作業が消滅しました。これが、既存のコミュニケーションパターンを変化させました」(鶴岡氏)
飲食店では、席に着いて食事をして、その後に会計をして退店するのが普通だ。しかしalways LUNCHの導入店舗では、会計作業がないため、代わりに「○○が美味しかった」「友達を連れてまた来ます」といったポジティブな会話が生まれる心理的なハードルが下がっていると鶴岡氏は分析する。
その結果、always LUNCHユーザーが飲食店をリピートしたり、知人・友人に紹介したりしており、来客数が増加しているのだという。定量的に測れるモノではないが、コミュニケーションが増えたことで、店舗側のモチベーションも高まっているという。
前例がないなら、事例を作ってデータを取ればいい
徹底的なデータ分析と店舗運営から方程式を作り上げるalways LUNCHのリリース前、鶴岡は本社がある大分県で、サブスク方式でのカフェ&バーを運営していた。そこでさまざまな検証をしていたという。サブスクの導入前後でのユーザー数や利用頻度の変動、男女比や利用時間の変化など、徹底的に検証を繰り返した。
店舗を作ったのは、検証のためだけでない。大分県のような地方都市は、東京や主要都市に比べ、ITリテラシーが低いケースが多い。そもそも飲食業界自体、ITリテラシーが高いとはいえない。そんな環境下でも問題なく利用できるように、デザインを研ぎ澄ませる目的もあった。
飲食のサブスクリプションはまだ前例が少ない。だからこそ、自ら前例を作り利用者の不安を取り除く。そんなこだわりに加え、飲食店の悩みの種である集客力のサポートを実現したことで、サービスを利用する飲食店の満足度は高評価だ。導入店舗の満足度は100%を達成している。
東京ではなく、地方からサービスを展開した理由
自ら店舗まで作り、緻密な準備を整えていたalways LUNCH。サービスは東京からではなく、福岡や京都からサービスを開始している。そこには鶴岡氏の起業家としてのある信念があった。
「東京でサービスをリリースして、たくさんのユーザーが付いてしまったら、大規模な変更は難しくなってしまう。“打ち上げ花火”的なものではなく、ユーザーの生活をサポートしていくサービスを目指していたので、まずは地方都市でサービスをリリースし、完成度を高めた状態で東京エリアに展開しようと考えていました」(鶴岡氏)