DeNAが、自治体から提供された診療報酬明細書などの医療データを、製薬会社に販売するなど本来の目的以外で利用している疑いがあることが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。複数の自治体が調査に乗り出している。事実であれば、個人情報保護法に抵触する可能性もある。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
DeNAのヘルスケア領域は大赤字
利益目標50億円の裏で疑惑浮上
DeNAといえば、「モバゲー」などからゲーム事業をイメージする人も多いだろう。
だが直近の決算は、そのイメージからほど遠い。ゲーム事業の利益は24年3月期第2四半期累計で4億円に過ぎない一方、スポーツ事業は同74億円に上る。ゲーム事業が主力の時代は、もはや過去の話だ。
そしてDeNAが、スポーツ事業以上に利益の柱として期待を寄せる事業がある。それがヘルスケア・メディカル事業だ。
同事業は、現時点では同22億円の赤字だ。それでも25年3月期までに50億円水準の黒字という野心的な目標を掲げていることから、相当の本気度がうかがえる。中でもデータ利活用事業は、1年で売り上げが3億円から8.4億円、製薬会社などの取引社数も同期間に24社から44社へと急速に伸びている。
だが、その急成長の裏で今、DeNAにある疑惑の目が向けられている。
DeNAグループと医療データ(診療報酬明細書等)の提供に関する覚書を締結した複数の自治体が、「DeNAが不正に医療データを取得し、製薬会社などに販売している」との疑いで調査に乗り出しているのだ。
東京都のある担当者は「住民の情報を製薬会社などの第三者に販売することは認めていないし、実際に販売されているとしたら問題だ」と憤りを隠さない。医療データ業界の関係者も「DeNAの手法がまかり通るなら、医療データの利活用事業は何でもありになってしまう」と指摘する。
DeNAは、医療データの目的外利用を行っているのか――。ダイヤモンド編集部が覚書の内容や内部資料を確認し、疑惑を検証した。その結果を次ページで公開する。