インフレ&金利上昇到来! 騙されないための投資術#18Photo:Jose Luis Pelaez Inc/gettyimages

足元はコロナ特需が剥がれ落ち、業績も株価も踊り場を迎えている医療IT企業。だが水面下では、潜在市場が急拡大するヘルステック2.0への移行が進行中だ。特集『インフレ&金利上昇到来!騙されないための投資術』(全22回)の#18では、各社の成長分野やベンチャーの勃興など、医療IT企業の今後を大胆に予測。併せて大野元泰・ケアネット代表取締役会長CEOのインタビューもお届けする。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

医療IT企業の株価は軟調だが
水面下で潜在市場が急拡大

 日本を代表する成長株として輝いていたエムスリーの株価が下げ止まらない。この10年、医療IT(ヘルステック)セクターは日本の数少ない成長セクターだった。

 その代表格であるエムスリーは直近10年で売上高、利益共に10倍以上に増加。同期間の平均売上高成長率も27%と超高水準を誇っていた。エムスリーを追うケアネットも本特集の#13『「5年で急成長」企業ランキングの上位勢に共通する強みは?SHIFT、セレス、アトラエ…』で15位にランクインしている。

 だが、エムスリーの株価は2021年1月に高値を付けた後、約70%も下落。ケアネットも高値からは半値以下になっている。

 株価が大幅に下落した理由は大きく二つある。一つはコロナ特需を受けて株価が急上昇した中で世界的なグロース株売りに巻き込まれたこと。

 もう一つはコロナ需要の一巡があったにせよ、事前想定よりも成長スピードが鈍化していることだ。特にエムスリーについては、医師会員サイトを活用した製薬マーケティング支援の売上高の伸びが鈍化している(下図参照)。

「製薬マーケティング支援は成長期の年率20%成長から成熟期の年率10%台成長に移行するとみていたが、足元は10%を下回り想定より低い水準で推移している。製薬企業がより費用対効果を意識するようになっている」(SMBC日興証券の徳本進之介アナリスト)

 このまま医療ITセクターは株価も業績も失速してしまうのか。だが、この懸念について徳本氏は明確に否定する。

「製薬マーケティング支援がけん引した医療ITセクターはヘルステック1.0から、レガシーな業界にも切り込むヘルステック2.0に移行しつつあり、潜在市場は大きく拡大している」(徳本氏)

 ヘルステック2.0とは何か。次ページでは潜在市場規模1兆円超といわれ、事業分野も増加するヘルステック2.0を分析し、活躍が有望視される注目企業を紹介。併せて大野元泰・ケアネット代表取締役会長CEOのインタビューもお届けする。