ベアリングバンクが倒産

 その中でも、最初のローグトレーダー(Original Rogue Trader)と呼ばれるのがニック・リーソン(Nick Leeson)です。

 彼は、未承認取引によって14億ドルもの莫大な損失を出し、イギリス最古の銀行であるベアリングバンクを倒産に追いやることになるのですが、当時彼の行っていたトレードの一つが、日経のショートストラドルでした。
 ショートストラドルについては7章で詳しく説明しますが、原資産が動かないときに利益を上げる戦略です。

 リーソンは当初日経先物を取引していたのですが、含み損を解消しようとして会社に未承認で大きなポジションを取るようになります。

 彼は、大阪証券取引所とシンガポールエクスチェンジ(SGX、当時のSimex)の日経先物の価格差を利用して裁定取引を行っていると偽って会社から資金を集めていたのですが、実は大阪でもシンガポールでも大量に日経先物をロングしており、極めて投機的なポジションをとっていました。

 先物は、ポジションのリスクに応じた一定額の証拠金を口座に維持することで取引が可能となります。日経が下がり始め、ポジションの含み損が増えていくと、ポジションを維持するためにキャッシュが必要となります。資金繰りに逼迫していた彼は、すぐにキャッシュを得るため、オプションを大量に売ることにします。そこで彼が行ったのがアトザマネーのコールとプットを売るショートストラドルでした。

 しかし、1995年1月17日早朝、リーソンそしてベアリングバンクの破綻を決定づける出来事が起こります。
 阪神淡路大震災です。日経平均は次の1週間で約8%も下げることになります。先物のロング、ストラドルのショートは言わば最悪のポジションでした。