運動したい、でもできない……。そこで本連載は論文マニアとしても有名な大谷義夫先生(医師)が、82の論文、世界の最新エビデンスをもとに正しく効果的な歩き方を書いた本『1日1万歩を続けなさい』から、今日から役立つ「歩き方のコツ」をお伝えします。ウォーキングは体にいい。それはたしかに事実です。でも実は「ただ歩くだけ」では効果が出にくいことをご存じでしょうか。同じ歩くなら「科学的な歩き方」で「最大効果」を手に入れる。ここを目指してみてください。
「筋トレ」でないといけないのか?
「やせれば健康になるのは当たり前だし、やせるには筋トレの方がいい」
筋トレはブームから定番に変わり、「有酸素運動では筋肉がつかない」という意見もあります。
目標はマッチョボディ?
たしかに美しいマッチョボディや筋肉増強を目指すなら、負荷が低い有酸素運動より筋トレがいいでしょう。
大臀筋、大腿四頭筋、ふくらはぎのヒラメ筋など、大きな筋肉が集中している下半身を鍛える際、「有酸素運動では強度が足りない」というのはその通りだと思います。
筋トレより先におすすめの運動とは?
しかし筋肉モリモリになるのは、プラスαの話ではないでしょうか。
「忙しくて運動不足」という、私のような「若いとは言いがたい人」、あるいは「太り気味で腹が出ている」「健康に不安がある」など悩み深き大人については、筋トレより先に内臓脂肪を落とすウォーキング(有酸素運動)をおすすめしたいと思います。
こわいのは「メタボ」
こうした大人にはおなじみの「メタボ」こと「メタボリックシンドローム」。
これは、おなか周りがぽっこりする内臓脂肪型肥満をきっかけに、「中性脂肪やコレステロールが増え」→「高血圧・高血糖・脂質異常症を招き」→「動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす」という厄介なもの。
内臓脂肪は「認知症リスク」にも関係するので実は注意が必要です(※1)。
メタボはメンタルの不調も招く
メタボで内臓脂肪が多いと、血糖値を下げるインスリンの機能が低下し高血糖になってきます。
そして血糖値が高いと血管が傷つき、将来の心臓病や透析、失明や足の切断のリスクになる上に「なんとなくやる気が出ない」というメンタルの不調まで引き起こします。
まずは歩いて内臓脂肪を燃やす
21世紀を生きる私たちの食生活は、好きなものを普通に食べるだけで糖のとり過ぎになりがちです。
たとえば気合いを入れるためのエナジードリンクも、たまの楽しみの甘い限定ドリンクも高血糖の要因です。
そこで効果的なのが有酸素運動である「ウォーキング」。
有酸素運動は糖質やたっぷりたまった内臓脂肪を燃やし、エネルギーに変える力を持っています。
だから医師である私はまずウォーキングから始めることをみなさんにすすめているのです。
※本稿は大谷義夫著『1日1万歩を続けなさい』より、一部を抜粋・編集したものです。本書にはウォーキングの効果にまつわるさまざまなエビデンスと、具体的かつ効果的な歩き方が紹介されています。
※1 Ozato N, et al. Association between Visceral Fat and Brain Structural Changes or Cognitive Function. Brain Sci. 2021Aug4; 11(8):1036. doi:10.3390/brainsci11081036.