次の総裁にふさわしいのは誰?奇妙な「低支持率安定政権」の内実11月2日、首相官邸で企業の賃上げ支援や所得税の減税などの対策について記者会見する首相の岸田文雄。「起死回生の決意」で打ち出したが、支持率の回復にはつながらなかった Photo:JIJI

「一喜一憂しない」――。この表現は内閣支持率が低下した際の政府与党幹部の常套句といっていい。11月6日の官房長官会見でも松野博一がこのフレーズを口にした。前日に共同通信が配信した世論調査が岸田内閣発足以来最低の28.3%になったことを受けてのコメントだ。

 同じ時期に行われたJNNの調査でも支持率は29.1%。すでに朝日新聞(29%)、毎日新聞(26%)、時事通信(26.3%)など10月の調査で危険水域とされる支持率20%台に突入している。逆に不支持率は共同通信の調査でも56.7%に達した。さらに首相の岸田文雄にとってつらいのは、「起死回生の決意」(岸田側近)で打ち出したはずの減税発表直後の支持率だったことだ。減税を超える有効な挽回策はおいそれと見つからないだろう。

 元首相の安倍晋三は内閣支持率に強いこだわりを持っていた。その理由は「高い支持率は政策実現に推進力を与える」(安倍)からだ。確かに、2012年12月に発足した第2次安倍内閣以降は、7年8カ月の在任中で最も低かったのは17年7月の調査の35.8%(共同通信)。森友学園問題や加計学園問題など、「学園シリーズ」と呼ばれた安倍を巡る問題が国会で追及されたときだった。

 岸田の支持率は今年5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で持ち直して以降は下り坂のまま。さらに見逃せないのが自民党の支持率も下降線に入りつつあることだ。多くのメディアが「青木の法則」に触れ始めた。青木の法則とは「参院のドン」と呼ばれた故青木幹雄が示した「政権の体力測定の目安」のことだ。

「内閣支持率と自民党支持率を足しても50%を切ると政権は持たんわね」。青木がこう漏らした経験則がいつしか政界に定着した。

 こうなると、マスコミの習い性としか言いようがない。「次のリーダーは誰か」に光を当て始める。共同通信も「次の総裁にふさわしいのは誰か」を聞いている。