自民5派閥巡るパー券問題の裏で、政権中枢の「岸田離れ」が表面化11月22日、衆院予算委員会の冒頭、自民党5派閥の政治資金パーティー収入の過少記載問題について発言する首相の岸田文雄 Photo:JIJI

「党の一部上層部は東京地検特捜部がどう出てくるのか、息を潜めて見守っている」

 こう語るのは自民党の衆院議員のベテラン秘書の一人だ。東京・江東区長選を巡る公職選挙法違反事件で注目を集める前法務副大臣、柿沢未途の捜査の行方ではない。事件と重なるように表面化した、自民党の各派閥が開いた政治資金パーティーの政治資金収支報告書の過少記載問題だ。

 政治資金規正法は、1回20万円を超えるパーティー券を購入した個人や団体は、名前や金額を収支報告書に記載するよう義務付けている。これを裏から解釈すれば、20万円を超えなければ記載義務はなくなる。ところが20万円を超えたパーティー券を購入した側が報告書に記載しているにもかかわらず、売った側にその記載がない事例が次々に発覚した。

 例えば、3人の派閥所属議員が個別に同じ購入者に20万円ずつ計60万円のパーティー券を売った後、3人がそろって義務がないとして記載しなかった場合などがある。さらに各派閥が販売ノルマを課し、それを超えて売りさばいた議員のオーバー分を取り分とするケースもある。その場合、浮いた金はどこに行くのか。

「議員個人の手元に残れば脱税の疑いも出てくる」

 自民党幹部ですらこう語るほど危うい状況にある。不透明な金の動きを明らかにしたのは、神戸学院大学教授の上脇博之だ。購入した政治団体と派閥の収支報告書を突き合わせたところ過少記載が明らかになり、東京地検に告発した。