そこで、内閣府が毎年2回公表する「中長期の経済財政に関する試算」(1月版・2月版)のデータを、12年度以降の予測と実績値で比較した。すると、興味深いことが分かった。
一つは、PB(対GDP比)とFB(同)のどちらも、19年度以降、予測と実績の乖離が拡大していることだ。
もう一つは、PB(同)赤字の予測は平均2.9%、FB(同)赤字の予測は平均4.3%だが、PB(同)赤字の実績は平均4.3%、FB(同)赤字の実績は平均5.6%もあることだ。つまり、PB赤字の実績は予測よりも対GDP比で1.4%、FB赤字は同1.3%も上回っている。
金融政策に目を向ければ、日本銀行の金融政策修正により長期金利が上昇し始めている。この傾向が続けば、国債の利払い費の増加を通じて25年度のPB黒字化のハードルが増し、政府の債務残高(同)も増加の一途をたどるシナリオが濃厚となる。
現在のところ、政府、与党は、25年度までのPB黒字化の目標を堅持している。24年度の点検・検証では、補正予算や減税などの影響を含め、なぜ予測と実績が乖離したのか、その要因に関する分析を行い、堅実な財政健全化のプランを作成することが望まれる。
(法政大学 教授 小黒一正)