国債残高1000兆円・GDP比180%!放漫財政続けた日本の「五大課題」の深刻Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 バブル崩壊後に「大型金融破綻」「リーマンショック」「アベノミクス」と、ことあるごとに悪化を重ねてきた日本の国家財政。この3年間のコロナ禍への対応で、財政悪化はさらに加速しており、2022(令和4)年度末にはついに普通国債残高が1,000兆円に達し、GDP比180%を超えた。筆者は、本誌2001年8月20日号・27日号に、本邦で初めてプライマリーバランス(PB)の推移に着目して財政構造分析を行った「プライマリー・バランス分析からみた財政構造悪化の軌跡」(上・下)を寄稿し、その後もこのアプローチを更新してきた。足元では、「防衛力強化策」「少子化対策」という新規政策が、その財源論とともに浮上し、悪化した財政状況に追い打ちをかけている。本稿では、日本の財政について、歳入・歳出両面の構造要因と、円高・景気対策やコロナ禍への対応といった臨時要因に分解し、PBの推移を時期別に分析した上で、今後の課題を探ってみたい。

PB赤字額と利払い費の合計分が増える国債残高

 まず、予算の収支構造を計数に基づき確認したい(図表1)。2023(令和5)年度当初予算では、国の施策のために89.5兆円、過去発行した国債の元利払いのために24.9兆円、合計で114.4兆円の支出が予定されている。その財源となる税収等(税収と雑収入)は78.8兆円に過ぎず、不足する35.6兆円を新たな借金(公債金収入)で賄うことになる。

 しかし、歳出のうち既往債務の元利払い分(国債費)は当年度に動かせない過去のツケに当たるから、当年度の財政の運営状況を測るには歳出から国債費を除くことになる。すなわち、当年度の施策に使う資金(基礎的財政収支対象経費)に対する当年度の税収等の過不足を測り、これを「プライマリーバランス」(PB)という。税収等の不足する金額が「PB赤字」である。「PB均衡(=ゼロ)」というと立派な響きがするが、これでさえ、民間企業でいえば借金の金利負担分をすべて追い貸しに頼ることと同じであり、PBが均衡していても銀行の債務者区分ならば破綻先に等しい。国のPBは23(令和5)年度の場合、10.7兆円の赤字となっているが、そもそも1965(昭和40)年度の国債発行以来、58年間のうちバブル期のわずか6年間を除いた全期間で赤字という悲惨な状況にある。

 国の予算は収支均衡しているため、言い換えると毎年度、PB赤字額と国債費の合計分だけ新しい国債が発行されていることになる。国債費のうち利払い費分は国債残高を増加させるが、元本償還分は既往国債の残高を減らすことになる。従って、単年度でも累計でも「国債残高はPB赤字額と利払い費の合計額分だけ増える」のだ。

 PB均衡の場合、国債残高のGDP比が上昇するかどうかは名目金利が名目GDP成長率より高いか否かで決まる。小泉純一郎内閣時代にこれを巡って論争があったが、いずれにせよ現行水準のPB赤字が続くならばGDP比は発散する。