ニュースでよく耳にする「脱炭素」というキーワード。多くの企業ではまだ他人事のように思っているが、今後、脱炭素に取り組まない企業は生き残れなくなる。『下請け製造業のための脱炭素経営入門』を上梓した株式会社ゼロプラスの大場正樹氏に、脱炭素経営やGXへの取り組みの有効性について話を聞く。

「脱炭素経営」は中小企業の切り札になる!〈PR〉Photo:PIXTA

「脱炭素」というキーワードが
この先30年にわたる経営課題

 最近、新聞やネットニュース、また取引先との会話の中などでよく耳にする「脱炭素」というキーワード。中小企業経営者の中で「脱炭素」の本質をきちんととらえ、長期的な視点で対処している方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。

 中小企業経営者の皆さんの認識は、「なんとなく聞いたことがある」「大企業や政府が対応するもの」「周りの企業が取り組んでから動く」といった感覚で「脱炭素」問題をとらえているのではないかと思います。なぜなら私も2年ほど前にこの問題に関心を寄せた当時、皆さんと同じ心境でした。

 そもそも「脱炭素」問題を考えるとき、科学的に正論なのか、政治的な思惑ではないのかなど、経営とは違う次元の話題に惑わされたりします。また、「脱炭素」問題自体が非常に大きく複雑なテーマで、ぱっと理解するのが難しいことも、なかなか対処できない要因です。

 私も皆さんと同じで、どこか他人事として問題をとらえていましたが、「脱炭素」が中小企業経営に与える影響の根本原因を突き止めてから、この問題に対する姿勢が180度転換しました。今では、「脱炭素」に取り組まない中小企業は生き残れないと確信しています。

「脱炭素」というキーワードが、この先30年にわたる長期間、企業経営の中心課題であり続けます。それは、世界の人々がサステナビリティを求めているからです。サステナビリティとは、持続可能性、つまり「美しい地球を守る」ということです。

 世界の人々が、サステナビリティを求めていくと、環境に優しい商品を購入しようとします。環境に優しい商品と環境に配慮していない商品が同じ価格で並んでいたら、環境に優しい商品が購入されます。サステナビリティの要求がもっと高まると、環境に優しい商品の価格が高くても購入されるようになります。

 現実に現在でも、スーパーの洗剤コーナーでは、詰め替えパックが棚を埋め尽くしています。また電気自動車やハイブリッド車も、ガソリン車に比べて価格が高いにもかかわらず、環境意識の高い層に購入されています。