2011年に会社法違反(特別背任)の容疑で逮捕され、その後実刑に服した井川意高・元大王製紙会長。だが実は現役時代、優れた手腕を発揮した経営者でもあった。特集『倒産危険度ランキング2024&初公開!企業を倒産させた金融機関ランキング』の#12では、製紙業界を知り尽くした井川氏が、忖度無用で【紙・パルプ8社】倒産危険度ランキングを喝破。後編では、四国の丸住製紙の深刻な経営状況についても語る。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
競争力のない会社は消えていく製紙業界
それ故に高い倒産危険度への注目度
会社法違反(特別背任)の容疑で逮捕され、その後実刑に服した井川意高・元大王製紙会長。だが、実は現役時代、赤字の家庭紙事業を立て直したり、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が日本で展開していた大人用紙おむつ「アテント」の事業を、将来を見据えて買収したりするなど、優れた手腕を発揮した経営者でもあった。
そんな製紙業界を知り尽くした井川氏に、紙・パルプ業界の倒産危険度ランキングについて忖度無用の解説をしてもらった。
――前回の倒産危険度ランキングで初めて紙・パルプ業界を取り上げました。ダイヤモンド・オンラインでは16業種中、自動車業界に次ぐ大きな反響を呼びました。
自動車業界と比べたら、周辺産業にすぎない製紙業界がなぜと思いますが。業界大手の日本製紙や大王製紙が大赤字を出したことで、やっぱり目立ったのでしょうね。
――その製紙業界ですが、企業同士の仲が悪いイメージがあります。2006年に業界首位の王子ホールディングスが北越コーポレーションに敵対的買収を仕掛け、日本製紙や大王製紙がそれを阻もうと動いたり。
カジノ事件(井川氏がカジノでの使用目的で子会社から総額106.8億円を借り入れていたことが発覚)を経て、北越が大王製紙の創業家から同社の株式22.3%を取得すると、大王製紙が300億円の転換社債を発行して訴訟沙汰になったり。
ああ、それはそうですね。
――取材していると、皆お互いのうわさ話が好きで。さらに「どこか、よその会社がつぶれてほしい」と願っているような雰囲気を感じます。
まあ、そうですね。紙パは本当に、ほぼ純粋な自由競争ですから。例えば、監督官庁に特殊な許認可権のようなものはありません。許認可で守られている産業とは違って、激しく競争してきたのです。
実際、上場している製紙会社の数は、昔に比べて少なくなりました。例えば、大昭和製紙や山陽国策パルプは日本製紙にのまれ、神崎製紙や本州製紙は王子と一緒になりました。日本加工製紙は自己破産です。競争力のない会社は、厳しい経営環境になると踏ん張れずに消えていきました。そういう業界だから「早く、あそこの会社がなくなってくれ」とか思ってしまうのでしょうね。
――それだけに、倒産危険度ランキングへの注目度は高いものがあります。さて、今回は紙パ8社が“危険水域”企業として名を連ねました。結果をどのように見ていますか。
次ページで井川氏は、倒産危険度ランキングに入った大手製紙会社に関し、「欲しいと思える良い工場が一つもない」と一刀両断。同社の生産面の問題について、紙の品種や工場立地までを具体的に踏まえながら、経営判断を先送りにしてきたトップ層を鋭く批判する。またインタビュー後編では、四国の名門製紙会社、丸住製紙の深刻な経営状況についても語る。