プロジェクトチームは200人
無申告者も調査の対象に

 情報収集・分析を担当しているのは、全国の国税局および沖縄国税事務所に設置されている「電⼦商取引専門調査チーム」だ。そこに関係部署で指名された職員で構成されるプロジェクトチームが加わって連携を図りながら、動画配信等のデジタルコンテンツ、ネット通販・ネットオークション、アフェリエイトなどのネット広告、民泊、暗号資産などの取引情報を調査する。プロジェクトチームの規模は全国で200人ほどと言われているので、その注力ぶりが分かるだろう。

 情報収集は、実際にデジタルコンテンツなどを閲覧し、誰がどれだけ取引をしているかを調べ推定売り上げなどを計算し、さらに、裏付けのため取引先事業者に情報提供を依頼する。従来、「依頼」に対しては任意に協力すればよかったが、2020年1月1日以降は法令が整備され、高額・悪質な無申告者等を特定するため、以下の要件を満たす場合、事業者には国税当局への報告が義務付けられるようになった。

(1)法定調書や協力要請等により対象情報が入手できる場合等、他の方法による照会情報の収集が困難であること。
(2)下記A~Cのいずれかに該当し、申告漏れの可能性が相当程度認められること。
A:年間1000万円相当の所得が生じ得る税務調査の結果、半数以上で申告漏れが認められている場合
B:特定の取引が違法な申告のために用いられるものと認められる場合
C:不合理な取引形態により違法行為を推認される場合

 なお、暗号資産に関しては、取引所は国税当局からの要請があった際、金融機関などに行う反面調査(*2)と同様に、利用者の取引履歴等の提出をしなければならない。

 シェアリングエコノミーに関する税務調査では、21年に東京国税局がウーバーイーツジャパンに配達員の報酬額や銀行口座などの情報提供を求めたことが分かった。関東信越国税局は、個人の技術や知識をネット上で提供できる「スキルマーケット」で楽曲を販売した男性に対し、多額の申告漏れの指摘と追徴課税を行っている。

 税法上、所得額が20万円を超える副業は確定申告が義務付けられているが、国税当局は意図的に申告を免れようとするだけでなく、申告自体を必要と認識していない人も多いとみて、行政指導も含めた対応をしている。

 国税庁の調査能力、とりわけ情報収集能力は、国内のあらゆる機関の中でトップクラスという評価もある。調査となれば、重加算税という税のペナルティーだけでなく、心理的プレッシャーは想像以上だ。副業の場としても活用しやすいシェアリングエコノミーには、厳しい目が向けられていることを意識しておきたい。

*2 納税者本人と取引する相手に対する税務調査。納税者の申告内容の把握が仕入れ先や取引先金融機関に確認しないと困難と認められる場合に実施する