Photo:PIXTAフリマなど個人取引のシェアリングエコノミーにも税務調査の触手が伸びる(写真はイメージ) Photo:PIXTA

ネットを介した経済が拡大している。シェアリングエコノミーや暗号資産(仮想通貨)取引といった、個人が稼げる新しい経済取引の仕組みの普及もその理由の一つだ。だが、おカネの動くところに税務署の影あり。新分野で取引を行っている個人に対しても、積極的な税務調査が行われている。国税当局はどんな点に着目しているのか、情報収集の方法は?

成長著しい新分野のネット取引で
稼ぐ個人に目を付ける国税当局

 モノやサービスの取引形態は、インターネットが普及したこの20年で一変した。Amazonや楽天市場などがけん引するEコマース、銀行や証券会社などのオンライン金融取引など、ネット上に形成される市場の成長は著しい。近年、その成長に拍車をかけているのが「個人」が提供するモノやサービスの取引市場の拡大であり、あるいは、暗号資産(仮想通貨)といった新しい“資産”の流通である。

 当然ながら、こうした新分野の経済取引に、国税当局が目を付けない理由はない。実際、ネット上でモノやサービスを売ったり、仮想通貨でもうけた「個人」に対しても税務調査は行われている。その実態は後述するとして、最初に「新分野の経済取引」の内容を少し詳しく見てみよう。

 代表的なのは、シェアリングエコノミーだ。所有から共有(シェア)へという価値観の変化に沿う形で、法人間はもちろん、法人・個人間、個人間での「(モノやサービス、スキルを)貸す・借りる」「(中古品などを)使い回す」の需要と供給を結び付けるプラットフォームが、ネット上にいくつも誕生している。

 シェアリングエコノミーが想定するカテゴリには、フリーマーケットサービスなどの「モノ」の売買ほか、民泊、駐車場、会議室などの「空間(スペース)」、カーシェアリングなどの「移動手段」の貸借、家事や育児、事務代行などの「スキル」提供・利用、クラウドファンディングなどの「お金」のやり取りがある(*1)。

 その市場規模は、コロナ禍の影響もあって2022年度には過去最大級の2兆6158億円(プラットフォームの売り上げを除く)に達し、10年後の32年度には最大で15兆1165億円(同)に拡大するという調査結果(*1)もある。政府も、持続可能な循環型社会づくりなどの見地から、シェアリングエコノミーを政策面で後押ししている。

*1 シェアリングエコノミー協会・情報通信総合研究所「シェアリングエコノミー市場調査 2022年版」より。市場規模の定義ほか詳細はこちらを参照