「賃金・物価の好循環」定着の先に
長期停滞からの脱却も展望できる年に?
元日に起きた能登半島地震を皮切りに、「裏金」問題による自民党の最大派閥安倍派や岸田派など3派閥の解消など、2024年は波乱の幕開けとなった。
将来のある時点で振り返ったとき、24年の日本経済は一体、どのような年だったと評価されるだろうか。
それは2つの可能性がある。第1は「賃金・物価の好循環」が定着し始めた年、第2に、バブル崩壊以降の長期停滞「失われた30年」から日本経済が覚醒し始めた年という可能性だ。賃金・物価の好循環の定着は、主に物価や賃金のノルム(広く社会で共有されている物価観、賃金観)の変化を背景とする。
そして「失われた30年」からの覚醒の可能性は、少子高齢化や人口減少といった人口動態や資本効率を高める経営を求める市場からの圧力の強まりという日本経済へのプレッシャーの下で、労働市場の流動性向上や省力化に重点を置いた設備投資など、より幅広い分野での企業や家計の長期的な行動変容を背景とする。
さらに、これら2つの可能性は互いに独立ではなく、賃金・物価の好循環の定着がより確実なものとなったとき、その延長線上に待ち受けるのが「失われた30年」からの覚醒といえる。
もちろん24年の立ち位置は変化の初期段階に過ぎない。日本経済、とりわけ企業や家計が今後待ち受けるさらなる変容圧力に「慣れる」のか、それとも「疲れる」のか。予断は許されない。