史上最年少(当時)の25歳で上場企業の副社長として企業経営に携わり、現在は起業家、エンジェル投資家として活躍する成田修造さん。実は、若手論客として名高い米イエール大学助教授・成田悠輔さんの弟でもある。両親に頼れない家庭環境だったことから4歳上の兄に強く影響されたという成田さん。「これからの時代は、IT、ファイナンス、起業家精神の掛け算が重要になる」と兄から告げられたことで、考え、実践してきたこととは?(聞き手/ライター 正木伸城)
起業家がいないと経済は発展しない
――成田さんは著作『14歳のときに教えてほしかった 起業家という冒険』で、「スタートアップは日本に残された唯一の希望」と切り出しています。そのスタートアップが日本で増えるために必要な「起業家精神」とは、ズバリ何でしょうか。
独立自尊で何かを生み出そうとする精神。何かに便乗するのではなくて、自分で考えて社会や人のために目標を立て、自身がリスクを取って行動する精神です。
今は投資が大事、投資が大事とよく言われますが、多くが「投資する側」の論理ばかり気にしています。確かに金融も発達してきているし、それで増えるお金もあるけれど、それは発展の本質ではないと思う。一方で、お金をばらまけば経済は伸びると言っている人もいる。それはある側面では正しいのかもしれませんが、結局、お金を使って「何かを生み出せる人」がいるから経済は発展するんです。
バナナの生産量が変わらないのに市場のお金だけ10倍に増えたら、バナナの価格が10倍になるだけです。そうではなくて、新しいバナナを生み出せる人もいれば、新しい車を、家を、サービスを生み出せる人もいる状況が大切。そこで初めてお金に意味が出てくる。
――今のスタートアップ市場をどのように分析していますか?
2008~09年ごろにスタートアップに流れていたお金の量は、資金調達額でおよそ500億円でした。それが22年にはおよそ8000億円にまで増えた。スタートアップは大成長産業になりました。それに、働く人の平均年収も上がっています。今はスタートアップに転職すると年収が上がるなんてザラです。
政府は「スタートアップ育成5カ年計画」で、資金調達額を8000億円から「5年で3兆円にまで増やす」と言っています。長期的には10兆円になるともいわれている。イノベーションを起こすにはそれくらいのお金が必要だと、政府も認識しているんです。
――ちょっと逆説的な質問になるのですが、そういった時代に、大企業に勤めるメリットとは何だと思いますか?