佐藤 最初の3日間が過ぎたあとも、現場には足しげく通ったのですよね。
ジョリー その通りです。1週間に一度は、必ず店舗に行って、何か商品を購入すると決めていました。またベストバイで購入した製品が壊れたときは、自分でフリーダイヤルに電話しましたよ(笑)。調査結果を見ているだけでは、本当のサービス品質を把握できませんからね。
従業員のやる気を引き出すために
実践した三つのこと
佐藤 CEO在任時、現場の従業員をやる気にさせるために意識して実践したことは何でしょうか。
ジョリー 三つあります。一つ目は、自分の考えや信念を正直に伝えること。従業員と話すときには、「ベストバイのこういうところがすばらしい」と伝えるとともに、「こういう点が問題だと感じている」と伝えました。また、自分が経営者として取り組む上での優先順位を明確に伝えました。「まずは売り上げの成長とコスト削減に取り組みます。まずはこの二つに全力を尽くし、人員整理は行いません。また人件費、福利厚生費など人に関わる費用は削りません」と伝えました。
二つ目は、常に明るくてポジティブな態度で接すること。家電に例えるならば、外部の温度をそのまま反映する「温度計」ではなく、むしろ、自ら熱を放ち、高めの温度を一定に保つ「サーモスタット」のような存在でいようと思いました。従業員は想像以上にリーダーの立ち振る舞いをよく見ています。立ち振る舞いは言葉よりも威力を持つと、私は考えています。
三つ目は、現場の従業員から指摘された点については、できるだけ早く改善することです。アマゾンと同じ価格で販売する、ウェブサイトを大幅にリニューアルする、カスタマー体験を向上させるための仕掛けをつくるなどをすぐに実践することにしました。従業員を言葉で鼓舞するのも大切ですが、私はむしろ「意見を聞いて、どう行動したか」を示すほうが重要だと思います。従業員は結果を見ています。自分の言ったことが目の前で改善されれば、がぜん、やる気になるでしょう。
佐藤 ベストバイのような大企業で、なぜこのように地に足のついた改革を主導できたのでしょうか。