原油相場はボックス圏の動きを続けている。中東情勢など地政学リスクの高まり、産油国の自主減産という相場の押し上げ材料と中国経済停滞、主要国中央銀行の利上げによる景気減速という下押し材料の綱引きが続いている。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 芥田知至)
紅海の運航ルート停止が
押し上げ材料に
原油相場は上値・下値とも限定された動きをしている。2023年12月後半以降は、米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)は70ドル台前半、欧州北海産のブレントは70ドル台後半を中心とした狭いレンジで推移している。
12月18日は、17日にロシアのノバク副首相が12月に同国の石油輸出削減量をそれまでの日量30万バレルから「日量5万バレルあるいはそれ以上増やす」と述べたことや、イエメンの武装組織フーシ派による紅海での商船攻撃などから海上輸送の安全性が懸念されたことが相場の押し上げ材料として意識された。
翌19日には、米国が紅海での護衛活動を行う有志連合を結成したのに対して、フーシ派はイスラエル関連の標的への攻撃を継続する姿勢を表明した。
クリスマス休暇明けの26日は上昇幅がやや大きくなった。紅海での商船攻撃が繰り返されていることや、ガザ地区でのイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの軍事衝突に緩和の兆しがみえないこと、米早期利下げ観測が強まっていることが買い材料だった。
しかし、27日には、海運大手が紅海航路を再開する動きを受けて、原油価格は反落した。24日に紅海経由の運航を準備していると発表していたデンマークの海運大手APモラー・マースクが今後数日から数週間の間に、コンテナ船数十隻の運航を計画していると明らかにした。
28日も続落。EIA(米エネルギー情報局)の週次石油統計で原油在庫の減少幅が市場予想を上回ったことが強気材料だったものの、紅海経由の運航再開の動きが前日に続いて売り材料になった。WTIは3.2%安、ブレントは2月限が1.3%安、3月限が3.0%安だった。
次ページ以降、24年に入っての動きを振り返るとともに原油相場の先行きを検証する。