大型SUVとしては異質なドライブフィールだが
これはもう大型SUV界にあって異質なフィールだ。大型SUVの魅力はおおらかなドライブフィールにもあるはずだから。もっとも硬質さを特に感じる速度域は30〜70km/hあたり。ドイツで重要な速度域は〜30km/h(市街地は大抵この速度域)と90km /h〜無制限だから、その辺りの乗り心地などどうでも良かったのかもしれない。
高速道路に入って速度を上げていくとビシバシと響くソリッド感はだんだんと心地よいフラット感へと変わっていく。大型で重いSUVであるにもかかわらず、アクセルを踏めば車体全体がビュンと機敏に反応するあたり、M史上最強のパワートレーンを積んだロードカーだけのことはある。
アクセルを踏み込んだ瞬間から、ドライバーは2つの面白い対比を楽しむことができた。エグゾーストノートは野太く、激しく、豪快だ。片やエンジンの唸りはというと、盛大でありながらも極めて精緻で滑らか。ボールド&スムース、このコントラストが面白い。変速の谷間を電気モーターがきれいにならすから、どこまでも加速するような錯覚にも見舞われた。
というわけで、XMの高速走行における最適な速度域は相当に高い。日本の高速道路の比較的速い領域、120km/h前後、ではやや力を持て余す。完全に宝の持ちぐされ。アウトバーンの、今や貴重な速度無制限区間で初めて“素晴らしいグランドツーリングカー”となるに違いない。一度でいいからアウトバーンを走らせてみたいもの。
Mモデルであることを納得したのはワインディングロードを走らせたときのことだった。ハンドル捌きに対する反応の仕方がまるでスポーツカーなのだ。的確なハンドリングと強力なパワートレーン。なるほど最強のMロードカーだと思う。
フロントスクリーン越しに流れ去る景色がまるで大きな画面で見るヴャーチャルゲーム映像のようだ。背の高さによる物理的なデメリットがかなりのレベルまで解消されている。視界が揺れない。思い通りにドライブできる。視線の高さが活きている。そして動きはまるでスポーツカー。全く新しいドライビングカーをBMW Mは開発したと言っていい。