子どもの頃に球場で感じた「感動」や「ワクワク感」には嘘も偽りもありません。
自分自身でも、確実に信じることができる「実感」です。この「実感」がベースにあるからこそ、自分の思考に「確信」がもてるのでしょう。「決断」するためには、「ロジック」を積み重ねることも大切ですが、決定的に重要なのはこの「実感」だと思います。「実感」がこもるからこそ、「腹」が座るのだと思うのです。
つまり、「決断」を迫られたときに、三流は「誰かに丸投げ」し、二流は「ロジカル」に考え抜くけれど、それだけでは一流にはなれない。最も大切なのは、自分の「実感」に基づいて思考を深めることではないかと思うのです。
それに、一度掲げた「旗」が間違いだったら、別の「旗」に変えればいいという割り切りもありました。
もちろん、いい加減な気持ちで「旗」を掲げるなどというのは、リーダーとしてあるまじきことです。いや、そんな「旗」は、誰の心も打たず、ただの”飾り物”に終わるだけです。とはいえ、一度掲げた「旗」がうまく機能しないのに、メンツや周囲のネガティブな反応を恐れて、それに固執するのも間違いだと思います。
なぜなら、時事刻々と移り変わる世の中のニーズに対応し続けるためには、状況に不適合となった「旗」を変えることを恐れない勇気こそが重要だからです。
実際、実力派の経営者ほど「朝令暮改」という表現がぴったりするくらい、しょっちゅう「旗」を変えています。むしろ、「旗」を変えるのを躊躇しないからこそ、長年にわたって好業績を上げていらっしゃると言うべきでしょう。
「決断する勇気」を手に入れる方法
そもそも、「旗」とはあくまで「仮説」にすぎません。
一度掲げた「仮説(旗)」を全力で実行してみて、それが間違っていたことがわかっても落ち込む必要などありません。むしろ、ひとつの「可能性」が消えたわけで、やるべきことの「照準」が絞られたと捉えるべきです。そして、新たな「仮説(旗)」を立てて、再び全力を尽くす。その繰り返しによって、一歩ずつ「成功」へと近づいていくのだと思うのです。
幸いなことに、僕の場合は、約10年後に社長を退任するまで、同じ「旗」を掲げ続けることができましたが、それは「結果論」にすぎません。そのことに「価値」があるのではなく、覚悟をもって「旗」を掲げることによって、組織力を最大限に引き出すことが大切。リーダーになったばかりのときは、明確に「旗」を掲げることの重責を前に、思わずひるみそうになるかもしれません。だからこそ、僕は、ダメだったら「旗」を降ろせばいいと、正しく割り切る勇気をもつことが大事だと思っています。その勇気があるからこそ、「旗」を掲げる勇気と覚悟も固まるのです。
(この記事は、『リーダーは偉くない。』の一部を抜粋・編集したものです)。