企業の発展には社員の成長が欠かせません。環境変化が激しい今。どんな環境に置かれても活躍できる人材こそが企業には必要です。エン・ジャパンは、社員を「どこでも活躍できる人材」にし、成長を果たしてきました。その根底にあるのは【CSA】という概念。この連載では「CSA」の考え方を詳しく解説していきたいと思います。
社員にCSAを身につけさせていたからこそ
他社に先駆けた経営判断が可能になった
「CSA」は私の造語です。正式には【CareerSelectAbility】。日本語訳をすると「キャリア自己選択力」という意味です。社内異動、または就職・転職のときに、自分が望む道をさまざまな選択肢の中から選べるだけの実力。転じて、どんな職場で、どんな環境に置かれても通用するような力です。
この表現は2010年ごろにつくりました。会社の大事な理念の1つに据えました。日本だけでなく、アメリカ、シンガポールでも商標登録をしています。
1983年にエン・ジャパンの前身である日本ブレーンセンターを創業。それ以来、この「CSA」を暗黙のうちに意識して経営を続けてきたように感じています。
一人で創業した当初は、当然ですが、会社はいつ潰れてもおかしくない状態です。それでも一緒に頑張ってくれる社員がいました。何か報いることはできないか。考え続けた結果、出てきた答え。それが、「うちに縁があって入社してくれた社員を“どこでも活躍できる人材”に育てること」だったのです。
もし会社が危機に陥っても、どこでも活躍できるようになっていれば、社員たちは困らないはず。経営者である私がやるべきことだ、と考えたのです。
実際に、当社社員のCSAを強く実感した場面がありました。
2008年に起こったリーマンショックのときです。多くの企業が危機に陥り、当社も影響を強く受けました。2009年5月に業界に先駆けて321名の希望退職を実施(当時社員数1094名)。批判も受けましたが、早めの動き出しが功を奏し、全員が転職先を決めることができました。
傷が浅い早いタイミングのほうが受け入れ先の選択肢は広がります。しかし、経営者にとって、早期の決断をするのは難しいものです。それにもかかわらず、なぜできたのか。日頃から社員にCSAを身につけさせている自信があったからです。決断が遅れた同業他社では、結局、より多くの早期退職者を募ることになりました。