<正解>

 コイン全体を「10枚」と「それ以外」のグループに分ける。
 次に「10枚」のグループのコインをすべて裏返す。
 これで2つのグループのコインは表の枚数が同じになる。

 ……答えを見ても、何が起こっているのかよくわからないですよね。
 きわめて簡素な内容ながら、解法を導くのはかなり困難。
 論理的思考問題のなかでも、発想力という点で最高峰に位置する問題です。
 正直、これは発想力が問われる問題なので、糸口を見つけて正解を導いていくのは難しいかもしれません。
 では、この方法でうまくいく理由を解説していきます。

コインを2つのグループに

 まず、たくさんのコインを「10枚のコイン」と「それ以外のコイン」のグループに分けます。
「10枚のコイン」グループに含まれる「表のコイン」は何枚でもかまいません。
 そもそも目隠しをされているため、意図的に選び抜くことは不可能です。

 このとき、「10枚のコイン」グループに含まれる表のコインの枚数を「n」とすると、以下のような関係が成り立ちます。

 ・「10枚のコイン」グループにある表のコインはn枚
 ・「それ以外のコイン」のグループにある表のコインは(10-n)枚

 いきなり「n」とか使ってすみません……。
 本書に登場する唯一の数学っぽい要素になりますので、ご勘弁を。
 これは要するに、

「ランダムに選んだ10枚のグループ」の方に表のコインが3枚あったら、「それ以外のグループ」の方には表のコインが7枚ある。

 という話です。
 当初、すべてのコインのうち「10枚だけが表になっていた」ので、これは当然ですよね。

「10枚のコイン」をすべて裏返す

 さて、この状態で「ランダムに選んだ10枚」のグループのコインをすべてひっくり返します。
 表になっているコインがn枚存在する10枚のコインを裏返すと、表のコインの枚数は(10-n)枚になります。
 まだわかりづらいですね。要するに、

「3枚が表、7枚が裏の10枚のコイン」をすべてひっくり返すと、「3枚が裏に、7枚が表になる」。

 ということです。
 さて、ここで2つのグループのコインの状況を確認してみましょう。

 ・「10枚のコイン」グループにある表のコインは(10-n)枚
 ・「それ以外のコイン」グループにある表のコインは(10-n)枚

 見事に2つのグループにある表のコインの枚数が同じになっています。

「思考」のまとめ

「10枚のコインが表になっている」という状況から、つい「表が5枚ずつのグループに分けなければならない」と思ってしまいがちですが、文章にはそう書かれていません。
 そこで「コインを裏返す」という柔軟な発想ができるかどうかがポイントでした。

 もし前提条件が「7枚のコインが表になっている状態」であったら、「表になっているコインを単純に分けるわけではない」と気づけたかもしれません。
「偶数だから、そのまま分けられるはず」という先入観が邪魔になる問題でもありました。

 ちなみにこの問題は、AppleやJPモルガンの入社試験でよく出題されているそうです。

 ・「こういう状況だから、こうしなければいけない」という思い込みが、解決策の発想を遠ざけてしまう

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター。論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者。ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1,500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。