【独自】損保カルテル問題の発端「東急グループ共同保険」、入札後の最新シェアを入手

損害保険大手4社による保険料の事前調整、いわゆるカルテル問題の発端となった東急グループの共同保険契約。2024年2月末から新たに結ばれた保険契約の多くで主幹事が入れ替わる事態となっている。その契約の詳細をお伝えする。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

東急グループの火災保険契約で
主幹事が東京海上から交代

 大手損害保険4社が企業向けの共同保険取引で、独占禁止法違反となる保険料の事前調整、いわゆる「カルテル」を行っていた事案。2023年12月26日に、東京海上日動火災保険と損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の大手4社が、金融庁から行政処分を受ける事態に陥っている。

 カルテル問題の発端となったのは、大手私鉄の東急グループ。その東急において、今年2月末を始期とする新たな保険契約が始まっているが、主幹事が大幅に入れ替わるという“異変”が起こっていた。

損保4社カルテル問題で行政処分を受けた損害保険大手4社 Photo by Akio Fujita

 新たな契約の詳細は後述するが、まずは東急をめぐるカルテルの経緯を振り返っておこう。

 事の発端は、22年11月に東京海上の営業担当者が損保ジャパンと三井住友海上、あいおいの担当者に保険料の事前調整を持ちかけたことだ。対象となる保険契約は、東京海上が主幹事を務める大企業向けの火災保険の一種、「企業財産包括保険(企財包)」。それと同時に、損保ジャパンが主幹事を務める「総合賠償責任保険」でも同様に保険料の調整行為が行われていた。

 150社超といわれるグループ会社を擁する東急だけに、その最大保険金額は2兆円を超える。そのぶん保険料も高額となり、更改前の契約の保険料合計は3年で20億円超。それが補償対象となる物件が増えたため保険金額が増大し、かつ損害率を加味した結果、新たな契約の保険料は30億円を超える見込みとなっていた。

 大幅な保険料増額により、東京海上の担当者は損保3社の担当者とショートメッセージなどで連絡を取り合い、保険料を調整した上で東急側に提示するなどした。ところが、損保各社が横並びの保険料を提示したことに疑義を呈した東急側が、再見積もりを求めると共に経緯報告までをも求める事態となってしまった。

 その結果、3年契約を1年に短縮した入札が行われ、企財包は東京海上が主幹事となり、賠責や利益包括保険などは損保ジャパンが主幹事となって契約更改が行われた。保険料水準は、3年に換算すると2割ほど安くなっている。(参照:「損保大手4社が東急グループの保険で手を染めた『カルテル問題』の深層」

 そして、この契約から1年が経過し、再び契約更改が行われ、今年2月末を始期とする新たな保険契約に更改されている。1〜3年の提示が求められたが、今回も1年契約となった。加えて、現在の新たな火災保険契約では東京海上が主幹事の座を明け渡すなど、5種目のうち3種目で主幹事交代が起こっているのだ。

 次ページでは、どの損保が主幹事の座を射止めたのか、また5種目のグループ包括保険の保険料やシェア変動の中身について詳述していこう。