写真:教育費のイメージPhoto:PIXTA

東京都はこの4月から、高校(私立・都立)や都立大学などの授業料を実質無償化する。また、大阪府でも4月から高校授業料の完全無償化が段階的に始まる。2026年度には全学年が対象になる予定だ。いい教育を受けるチャンスが多くの人へ広がる、公平性が高くてすばらしい政策のように思えるが、実は正反対の結果に陥ると指摘する先行研究がある。(イトモス研究所所長 小倉健一)

「教育費無償化」政策の効果は
政治家の妄想でしかない

 今回は、近年、主要政党が誇らしげに掲げるようになった「教育費無償化」について述べたい。

「教育費無償化」とは、もちろん、国民がお金を払わなくていい制度ではない。学生の授業料を税金で全額負担することを意味している。学生とその親は支払わず、学生でもない人、子どもがいない人など、何の関係もない人がみんなでお金を出し合う仕組みである。この「教育費全額税負担」の政策の目的は、政治家によって説明はさまざまだが、大きく下記の三つがある。

1 進学率の向上

 教育費の負担が税金で賄われることで、経済的な理由により高等教育を受けられなかった学生が進学しやすくなる。これは、特に低所得家庭の子どもたちにとって、教育を受ける機会が拡大することにつながる。教育を受ける機会の公平性を高める。

2 少子化問題の解決

 学費が税金で負担されることにより、家庭の経済状況が改善され、お金が足りないことによって子どもを産まない選択をした家庭が、もう一人子どもを生むようになる。

3 「教育の質」のレベルアップ

 私立学校の学費が税金で負担されることによって、公立学校に通っていた生徒が私立学校を進学の選択肢に入れるようになり、競争原理が働くことで公立学校のレベルがアップする。

 結論から言えば、この上記三つは、政治家たちの妄想でしかなく、現実は違った方向へ動き出していくことになりそうだ。丁寧に説明をしていこう。