日産とホンダの包括提携の動きは、両社の取引先部品メーカーの再編や技術統合の促進で、サプライチェーン全体の収益力向上が図れるかどうかも焦点となる。

 その意味では、元々日産の主力取引先であった日立Astemo(アステモ)の経営をいまはホンダが握っていることに筆者は注目している。日立アステモの源流は日立製作所の旧自動車部品事業部門であり、かつてはルノー提携前の日産が芙蓉グループの中で「トヨタのデンソーに対抗できる日産系主力部品メーカーにしたい」と位置付けていたこともある。

 それが21年1月に、日立の完全子会社の日立オートモティブシステムズとホンダ系のケーヒン、ショーワ、日信工業3社が統合して「日立アステモ」が発足したが、これを主導したのが、系列部品メーカー再編を狙ったホンダであった。「本来、日産系の主力サプライヤーであった日立の自動車部品事業にホンダが触手を伸ばした」と、業界の関心を集めた。

 23年10月には、ホンダが日立アステモの出資比率を40%に引き上げるとともにホンダ元副社長の竹内弘平氏を社長に送り込むなど関与を強めている。日立アステモは、EV駆動部品の軸とされるイーアクスルを主力としており、当然、日産も今なお取引先だ。

 それ故、この日立アステモを巡る一連の再編が、今回の日産・ホンダの協業化への布石となったとも受け止められるのだ。

 日産・ホンダの新連合。その行方は予断を許さない。ただ、両社は、世界最大の自動車市場でありEV大国として産業をリードする中国と、EV偏重にやや風向きが変わってきている北米市場を共に大きな収益源としており、課題意識も重なるはずだ。

 果たして、自動車業界における王者トヨタ連合への対抗軸となり得るのか。日産・ホンダ新連合が、従来の自動車産業の枠を超えたフロントランナーとなってリードしていくことを期待したい。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)