ホンダのサプライヤー政策が混迷を極めている。その象徴が、日立Astemo(アステモ)への出資比率を引き上げ、日立製作所から主導権を取り戻したことだ。アステモは、競合するデンソーと比べて収益力や技術力に課題が多く、EV時代のホンダの足かせになりかねない。特集『ソニー・ホンダの逆襲』(全18回)の#10では、日立の“問題児”だったアステモをホンダが引き取った理由を解明するとともに、ホンダとアステモの共倒れリスクに迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
ホンダが日立の“問題児”Astemoを
引き取った裏事情とは!?
電気自動車(EV)向け駆動モーター「イーアクスル」などを開発する日立Astemo(アステモ)は2023年10月、資本構成を変更した。
それまでは、日立製作所が66.6%、ホンダが33.4%で、日立の子会社となっていたが、ホンダが出資比率を40%に引き上げた。
事実上、ホンダがアステモの主導権を日立から取り戻したことになる。
ホンダは、財務・管理担当が長く、副社長を務めていた竹内弘平氏を社長としてアステモに送り込んだ。八郷隆弘前社長時代に手が回らなかったサプライヤーの立て直しを急いでいるように見える。
ところが、この経営判断には自動車関係者の多くが首をかしげた。アステモの業績を見ると、22年度の営業利益率は3.6%と同業のデンソーの同6.7%を大きく下回っており、「二輪事業でなんとか黒字化しているような企業」(ホンダ関係者)だからだ。
そもそもアステモは、21年1月に日立の完全子会社だった日立オートモティブシステムズと、ホンダ系部品メーカーのケーヒン、ショーワ、日信工業の3社が統合して誕生した企業だ。イーアクスルのほか、先進運転支援システム(ADAS)や二輪車向けサスペンションも製造。ホンダの他、日産自動車にも部品を供給している。
ホンダが出資比率を引き上げたのは、名目上、EV化に対応するためとされているが、関係者の多くが腑に落ちないと話す。
実は、日立に預ける形で21年に再編したばかりの部品メーカーの主導権をホンダが握ったことには、日立の思惑が大きく影響していた。
次ページでは、ホンダがアステモを引き取った裏事情と、ホンダとアステモの共倒れリスクを明らかにする。