もちろん、スピード感を重視した結果、発表会見時点では具体的な提携内容が後回しになったという面もあったかもしれない。

「詳細な検討はこれから。両社ウィンウィンの関係が成り立つことが条件」(三部ホンダ社長)、「具体的なワーキンググループに落とし込んで、両社の成長につながる方向へ極力、短期内で進める」(内田日産社長)と、両首脳は発言している。それでも、その主なターゲットがEVの中核駆動部品のイーアクスルや電池、車載ソフトなどで、協業化による生産コスト削減を念頭に置いていることは確かなはずだ。

 それでは、この日産・ホンダ連合の成否はどうだろうか。

 やはり最も気になるのが、日産はルノーとのアライアンス関係を両立させることができるのか、という点だ。昨年11月、1999年のルノーとの資本提携以来の資本関係(ルノーが日産に43%出資)を、双方が15%出資する形で見直しするとともに、日産はルノーのEV新会社「アンペア」への出資を決めていた。同様に、日産傘下にある三菱自もアンペアへの出資を決定していた。

 だが、ルノーは予定していたアンペアの上場を見送った。ルノーのEV新会社に垂れ込める暗雲が、今回のホンダとのEV協業を深めることに作用するのか、という点が注目だ。また、日産は24年度から新中期経営計画を進めることになっており、19年12月に就任した内田体制の最終段階として成果を強調すべく、どのようにこの中期計画にホンダとの提携を織り込んでいくか、ということも注視しなければならない。

 一方で、三菱自の出方も注目される。16年に日産から34%出資を受け入れて傘下となり、ルノー・日産グループ入りしたが、その後、三菱自は業績も回復し、三菱商事をバックとする新たな方向づくりも模索しているとみられている。

 今回の日産・ホンダの会見で、内田日産社長は「三菱自もホンダとの可能性を論議していく」と連携を示唆した。

 三菱自がこの提携にどう対応していくかが今後の焦点になるが、実は三菱自とホンダには、それこそ過去に統合・合併が水面下で動いた因縁がある。