90年代前半に、当時業績悪化で経営危機に陥ったホンダに対し、「日産の背中が見えた」と豪語したトップがいたほど絶好調だったのが三菱自だ。その時、両社のメインバンクであった三菱銀行が仕掛けたのが三菱自とホンダの統合・合併だった。

 当時のホンダのトップは「三菱自とは社風も、ものづくりも全然違う。融和するわけがない」と突っぱねた。幸いにして、直後にホンダは「オデッセイ」が大ヒットして救世主となり、この話は立ち消えになった。

 それから30年余りを経て今回の日産・ホンダ連合への動きに三菱自がどう対応していくのか注目されているのだから面白い。なお、4月1日付で三菱自が日産の山口武常務執行役員を開発担当の代表執行役副社長として迎えることを発表しているが、この人事も気になる動きだ。

自前主義から大きく転換するも
GMとのEV提携は不調気味

 ホンダの観点から今回の動きを見ると、ポイントはやはり三部社長の行動力とリーダーシップだろう。

 三部ホンダ体制になってから、ホンダはこれまでの「自主自立路線」から、生き残るためには積極的なアライアンスも辞さないスタンスへ大きく経営方針を変えた。

 21年4月の社長就任時に自ら「乱世に強いタイプ。逆風の時代こそ夢がある」と語った三部体制も4月で4年目を迎える。この間、二輪事業に「おんぶに抱っこ」といわれた四輪事業の収益力向上に注力する中で、EV関連ではGMとの提携強化やソニーグループとのEV共同開発など、注目の提携を連発してきた。

 しかし、だからといって必ずしも安泰とはいえない。GMと量販価格帯のEVを共同開発し27年に発売する予定だったが、ここへきて中止を発表しているほか、ソニーと共同開発するEV「アフィーラ」はエンタメEVであり、そもそも量産効果を企図したものではない。

 このため「ホンダと親和性の高い日産と技術的なアプローチを共通にすることで投下資本を大きく効率化できる」と考えたことが、日産との協業を後押しした要因だろう。