これは、英紙フィナンシャル・タイムズが「19年末に政府関係者がホンダと日産に経営統合を打診した」と報じられたものだ。

 当時は日産が業績悪化と経営陣の混乱という経営的に厳しい状況に陥り、立て直しに向けて内田社長が就任した直後であった。一方のホンダも、八郷隆弘前社長時代の四輪事業の構造改革が迫られていたタイミングであり、当時、王者トヨタに対抗するためにも日産・ホンダ統合へ経済産業省が水面下で動いた、との見方で受け止められた。しかし、両社は断ったとされる。

 あれから4年が経過する中で、電動技術やソフト領域に価値がシフトする新自動車時代へのスピードは速まり、取り巻く環境も変化している。海外のテック企業や米テスラ、中国BYDを筆頭とする新興勢力の攻勢が本格的な脅威となってきている。

 かつてのホンダ・日産統合の話は、どちらかといえば日産の救済のためという側面があったようだが、今回の提携は意義が大きく変化した。

「2030年の断面で見て、両社の強みを生かしたスケールメリットによりトップランナーでいたい」(三部ホンダ社長)、「5年先を見据えて待ったなし。われわれがグローバルで持続的成長をするために何をやるべきかだ」(内田日産社長)という両首脳の発言からも明らかな通り、新連合の狙いは両社の強みを持ち合い、幅広い協業の可能性の中、新たな価値を生み出していくという“同等”の立場での提携推進となる。

 とはいえ、15日の内田・三部両首脳による会見は、あくまでも協業検討で合意しただけで、具体的な中身は何もなかった。会見後の両トップ撮影で握手するポーズもなかったという光景が、両社の関係構築がこれからであることを物語っている。