2023年の損保業界は、ビッグモーターによる保険金の不正請求問題や、大手企業グループに対する保険料の事前調整、いわゆるカルテル問題で大わらわとなった。これらは損保業界の歪な商習慣によるもので、特集『総予測2024』の本稿では、その中身を解明していく。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
ビッグモーターにカルテル
損保業界がため込んだ問題が噴出
2023年は、これまで損害保険業界が長らくため込んできた多くの問題が一気に噴出した年だった。
まず、中古車販売大手のビッグモーター(BM)による保険金の不正請求問題では、保険代理店を兼ねている自動車販売店と損保との“もたれ合い”の構図が明らかとなった。
BMのような板金工場を持つ自動車販売店は、自動車保険の販売だけでなく、事故車の修理も行っている。そこでBMは、自動車損害賠償責任保険(自賠責)を割り振る見返りに事故車の紹介を優先するよう損保に働き掛けていた。
国の強制保険である自賠責はどの損保で加入しても同じであるため、自賠責欲しさに損保は事故車の入庫紹介を競い合うという構図が出来上がった。そして、運び込まれた事故車にわざと傷を付けるなどして、BMは保険金の不正請求を行っていたわけだ。
これら不正が明らかになり、損保各社は一斉に入庫紹介をストップした。ところが、他損保のBMへの営業攻勢に恐れを抱き、22年7月に1社だけ入庫紹介を再開してしまったのが、損害保険ジャパンだった。
その後、BMと共に損保ジャパンもメディアから集中砲火を浴び、22年4月に大抜てきされて就任した白川儀一社長は、わずか1年半で引責辞任を表明する事態に追い込まれた。
24年初頭には金融庁による行政処分があるとみられており、親会社であるSOMPOホールディングスのガバナンスについても問われることになるだろう。
次に、鉄道大手の東急グループに端を発した保険料の事前調整、いわゆるカルテル問題だ。
BMのような大型代理店や、カルテルを行った大企業グループに対し、なぜ順法意識が欠如した行為を行っていたのか。