人工知能(AI)ブームに乗りたい投資家が、ひと気の少ない市場の一角に注目している。発電所を所有・運営する企業だ。株価が高騰しているが、理にかなっているのだろうか。AIブームをテコに米電力会社ビストラの株価は今年に入って85%上昇した。米画像処理半導体(GPU)大手エヌビディアの92%という驚異的な上昇率には及ばないものの、米マイクロソフトの12%を大きく上回っている。原子力発電施設を所有する米コンステレーション・エナジーは年初来で60%、同NRGエナジーは32%それぞれ上昇した。米国ではエネルギー効率化が奏功し、電力需要は2010年以降おおむね横ばいで推移してきた。ここにきて、AIの普及でデータセンターの増加が見込まれるほか、半導体支援法(CHIPS法)が製造業のニアショアリング(近隣国への生産拠点移転)を促し、暖房や輸送などの電化が進んだことを背景に、電力需要が伸びると予想されている。マッキンゼー、BCG、S&Pグローバル・コモディティー・インサイツはいずれも、データセンターに絡む電力需要の2030年までの年平均成長率(CAGR)が13~15%になると予測する。データセンターが集まるバージニア州の地域送電機関(RTO)、PJMインターコネクションは、総電力需要の今後10年間の年平均成長率予想を1年前の1.4%から2.4%に引き上げた。