風俗で働いているというと悲惨な人生を想像してしまうが、精神的な問題を抱える人の中には「働きやすい」と感じる人も多い。実際、性風俗の仕事が精神的な拠り所になっていたり、性風俗の仕事のおかげでどうにか生き延びることができたという女性も少なくない。だが、その裏には大きなリスクも横たわっている。※本稿は、『ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢』(朝日新聞出版、朝日新書)の一部を抜粋・編集したものです。
昼の仕事より融通が効き
希薄な対人関係ゆえに続けられる
「風俗嬢は、病んでる子が多いから」
取材のなかで、性風俗業の女性たちから、よく耳にした言葉だ。性風俗で働く女性を対象にした生活・法律相談事業を行う「風テラス」を運営する坂爪真吾さんによれば、「風俗の仕事で稼げていない層の半分以上が、何らかの精神的な問題を抱えていると見ている」という。
実際、坂爪さんが運営する風テラスに相談に来る女性の大半が、精神的な問題を抱えている。なかには、昼の仕事での長時間労働によるストレスや、上司からのパワハラやセクハラでメンタルを壊して精神疾患を抱えてしまい、結果として性風俗以外に働く場所がなくなってしまったという女性もいる。
また高校卒業後に就職したものの、職場のストレスでうつ病になり、それからデリヘルや単発のバイトなどを繰り返して、気がつけば50代になっていた女性もいるという。
「一般的には『性風俗で働くからメンタルを病む』と考えられている向きがありますが、それは違う。実際には『メンタルを病んだ結果、性風俗で働かざるを得なくなった』という構図のほうが正確です」(坂爪さん)
何らかの精神的な問題を抱えていることで、例えば時間通りに出勤できなかったり、対人コミュニケーションが苦手だったりすると、昼の仕事に就労するのが難しい場合もある。
それに比べて性風俗の仕事は、一般的な昼の仕事に比べて時間の融通が利きやすく、コミュニケーションが苦手であっても、基本的には客とは行きずりの一時的な関係で、深く関わる必要がないこともあり、この仕事なら続けられるという人もいる。
性風俗の仕事が精神的な拠り所になっていたり、性風俗の仕事のおかげでどうにか生き延びることができたという女性も少なくない。
実際、パニック障害やうつ病、引きこもりなどの理由で、一般の仕事をすることが難しい女性にとって、性風俗店は収入を得ることのできる貴重な職場でもある。なるべく人と関わり合いたくないという理由で、性風俗で働いて一定のお金を貯めた後、何もせずにただ貯金を切り崩しながら生活する女性もいる。