子連れでも即日入居可能な寮など
性風俗店が生活を支える側面も

 そのため、「絶対に風俗の仕事がいい」「ずっとこの業界で働きたい、辞めたくない」という女性も少なくないという。歌舞伎町など歓楽街の研究を続ける武岡暢准教授(立命館大学)は言う。

「性風俗の仕事は、精神的な問題を抱えていても、一般的な昼の仕事と比べて働きやすい場合があるとは言えます。今の日本は、フルタイムでの就労のハードルが高く、精神的な問題を抱えた人にとっては就労がかなり厳しいのが実情で、社会の構造がいびつとも言える。本来であれば、もう少しハードルを下げた、中間的な就労のスタイルが選べたり、精神疾患がある人も従事しやすい環境があると良いのですが、現状ではそれがなかなかありません」

 また、経済的困窮や家族がいないなどの理由から住まいを借りることができない人にとっては、性風俗の店で多い、寮が完備されている就労環境に助けられることも多い。

 単身のみならず、子連れであっても即日入居可能なマンションや寮を完備しているキャバクラやデリヘル店は全国にあり、福祉の世界に先駆けて、手厚い体制を敷いているのが水商売や性風俗の世界という実態もある。結果的に「現金日払い」「即日高収入」「住まい完備」という風俗の仕事に助けられている人も少なくない。

「性風俗の仕事は、障害者雇用枠や就労継続支援事業などの福祉的就労に比べれば、複雑な申請手続きや面倒な審査もありません。何より、福祉的就労の月収に匹敵する金額を、わずか数日、場合によっては数時間で稼ぐことができる。家族からの排除、家がないハウジングプア、働いていても貧困状態にあるワーキングプア、そして障害に伴う社会的排除、それらの問題を解決してくれる仕事になり得る。その意味で、今の福祉的就労は、性風俗の仕事に勝てない側面もあると感じます」(坂爪さん)

稼げなくなったら
すぐに退去を迫られる

 性風俗の業界は、生きづらさを抱えた人が集まりやすい世界という側面もある。性風俗の仕事に至る背景には、何か劇的なドラマがあるわけではなく、誰にでも起こりうる些細なことが積み重なった結果だったりする。