GPSレシーバー、加速度センサー、3Dジャイロを搭載し、7インチ液晶画面でGoogleマップを利用できるNexus7が昨秋国内発売されたことが起爆剤となり、タブレットやスマートフォンをカーナビ代わりに使う人がますます増えてきている。
Googleマップは目的地を入力すればきちんと経路を表示してくれ、端末のGPSレシーバーの性能にもよるが現在地の追従性もおおむね良好。右左折ポイントを見逃す恐れも少なく、有料道路の料金や所要時間予測、渋滞情報まで表示してくれ、込み入った市街地では一方通行路も一目瞭然だ。少なくとも筆者がNexus7を助手席ナビとして利用した限りでは、長いトンネルで自車の位置を見失うこともなく、性能は必要十分だと感じた。なにせ、端末料金とデータ通信料を別にすれば、カーナビとしての利用料はゼロなのだから、これは大きい。
ただしGoogleマップは車載専用機とは違って、交差点や高速道路の出口でレーンをポップアップ表示するまでの機能はさすがにない。専用機にはバックモニターの機能もあり、全般的な使い勝手のよさを評価する声は根強い。カーナビアプリ利用者への調査でも、地図や従来型のカーナビのほうがよいという回答が全体の62%に上っている。
そんななか、サービスを有料化することで専用機と遜色ない使い勝手を実現したアプリが各社から出されている。ドコモのドライブネット(月額315円)、アイシンAWのNAVIelite(年間3800円)、ゼンリンのいつもNAVI[ドライブ](7500円)、ナビタイムジャパンのカーナビタイム for Smartphone(月額570円または年額5700円)あたりが代表的なところだが、専用機並みの使い勝手に加えて、常に最新の地図が利用できたり、オフラインでも使えたりといった特長がある。
車載専用機に対する不満の声で目立つのが、本体価格は別にしても地図更新費用の高さだ。3年間地図更新無料といったサービスも増えてはいるが、それ以降は更新のたびにNexus7が買えてしまうほどの費用がかかってくる。また地図の更新頻度についても、到着地点が地図の表示とは違っていた経験の持ち主が50.8%に上るなど、ユーザーの不満の元になっている(ミックウェア調べ
)。
そのことからも、地図の精度と更新頻度はカーナビの命だと言えるが、ソーシャルの力を借りることでこの問題にスピーディーに対処できることを売りとするユニークなイスラエル発のアプリがアメリカで大人気となり、すでに日本でも利用可能になっている。
その「Waze」のユーザーは、走行中に出くわした渋滞や工事規制を、その場で報告することができる。アプリのメニューに「渋滞」や「工事中」の専用アイコンが並び、それをタップするだけで報告でき、スマホで撮影した画像を添付することもできる。そして利用料は、もちろん無料だ。
また、走っていて道路のつながりなどが実際と違っていた場合にユーザーが地図を編集できる機能もある。ユーザーによる細かな修正が積み重なって地図の精度が高まったことで、アメリカでは地方のテレビ局の交通情報の報道にWazeの地図が使われているほどだ。
そんなWazeを筆者も試してみたが、残念ながら、名古屋市とその近郊で利用した限りでは、使い物にならないという印象だった。経路検索ではとにかく主要道を優先して使うアルゴリズムになっているらしく、明らかに遠回りな国道経由のルートが指示されたほか、市街地に多い一方通行路も表示されなかった。
これは、利用者がまだ少なく、ソーシャルのメリットが生かせていないからだと思われる。今後日本でもWazeのユーザーが大きく増えれば、状況は一気に好転するかもしれない。カーナビアプリのひとつのあり方として、期待していいかもしれない。
(待兼音二郎/5時から作家塾(R))