「忙しすぎて本を読む時間がない」「1冊読み切るのに時間がかかる」「読んでも読んでも身につかない」――そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくありません。本を読めばいいことはわかっているのに、自主的に読めない人もいるでしょう。
何の本をどう読み、どう活かしていくか――働くうえで必携のビジネススキルを良書から抜き出したのが『ひと目でわかる! 見るだけ読書』。本書は、コスパやタイパを重視する現代的な読書スタイルを重視する人にとっても、魅力的な読み解き&活用法です。たった「紙1枚」を見るだけで本の最も大事なポイントが圧倒的なわかりやすさで理解でき、用意したワーク1枚を埋めるだけで即スキル化できる1冊。それも1万冊の読書体験と1万人を教えてきた社会人教育の経験から、絶対に読んでほしい24冊+αを紹介。ただ、エッセンスをまとめただけでなく、読後には、紹介した本が有機的につながっていく仕掛けがあなたのビジネススキルを飛躍的に向上させます。
新社会人になったら「とりあえずこれ読んで」
一昔前であれば、「困ってるなら、この本でも読んで」といって良書を次々に紹介してくれるような諸先輩がいたかもしれません。ところが、今やそんな存在は絶滅危惧種・天然記念物レベルになってしまったため、少しでも代わりになればということで『見るだけ読書』を上梓しました。
ただ、この本は年代というよりも、日々の仕事やキャリア・人生の舵取り等に悩む読者に広く役立ててもらいたいという考えで、24冊を選書・ガイドしています。
今回は新年度が始まったばかりというタイミングなので、この春から社会人になった皆さんに向けて、3冊の名著をピックアップしてみました。
1.「なぜ、働くのか?」の根幹を学ぶ
最初に紹介するのは、実際にかつて私が新卒だった当時、4月1日の入社式前夜に読んだ本です。『仕事の思想 なぜ我々は働くのか』(田坂広志著、PHP研究所)という書籍で、タイトル通り「なぜ働くのか?」という問いについて根本から深く考えることができます。
この名著を通じて、私は「働くとは、傍(はた)=周囲を楽(らく)にすること」という仕事観を見出したのですが、あれから20年近く経った今でも、一日たりとも忘れることなく大切にし続けています。
2.「なぜ、学ぶのか?」を学ぶ
1冊目が「なぜ、働くのか?」だったのに対して、2冊目の名著は「なぜ、学ぶのか?」についての根本的な理由をつかみ取ることができます。福沢諭吉の『学問のすゝめ』です。この本については、『見るだけ読書』でも「紙1枚」にまとめて紹介しています。
この「1枚」の左上部分に、赤ペンでまとめてある通りです。「なぜ学ぶのか?」に関する福沢諭吉の答えは「社交=人と関わるため」です。多くの学習者がスキルアップやキャリアアップといった「自己完結」オンリーで学んでいるのに対して、『学問のすすめ』の特に終盤を読んでいると、「脱・自己完結」の学びの重要性に気づくことができます。
リスキリングや生涯学習がキーワードになって久しいですが、そもそも何のために学び続けるのかについての根本を見失っている社会人学習者に、これまで数多くお会いしてきました。
どうか、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」という有名な冒頭文だけでなく、「人にして人を毛嫌いするなかれ」という最終文の方をじっくり味わうつもりで読み解いてみてください。
3.「なぜ、うまくいかないのか?」を学ぶ
最後の3冊目は、何かしら思い通りにならない状況に陥ってしまった時に備えて、今のうちに読んでおいてほしい名著です。『私の幸福論』(福田恆存著、筑摩書房)という本で、私自身、仕事で理不尽な目にあったり、不条理な体験をした際に救われた経験があります。
タイトルは『私の幸福論』ですが、幸福というよりは「不幸や不満・不遇を感じた時の処し方」といった内容で、だからこそ「もうこんな会社も社会も人生もやってらんね~」となった時に効いてくる本です。
ただ、現代の読者にとってはかなり痛烈に感じる書き口の本なので、しんどい状態の真っ只中で読むよりは、フレッシュで元気のある今のうちにまずは一読しておくことをおススメします。
以上、春から社会人となった皆さんに向けて、「仕事観」「学習観」「幸福観」を磨いていけるような名著を紹介しました。私自身、異動や転職、独立、海外移住等、理想とするキャリアを実現するうえで読後に活かすことができている本ばかりです。良いきっかけとなれば幸いです。
(本原稿は書籍『ひと目でわかる! 見るだけ読書』著者の書き下ろしです)